2010年2月22日(月)「しんぶん赤旗」

切実な医療 奪うのか

介護療養病床の廃止方針継続

「民主は公約破るな」


 「大量の医療・介護難民が生まれる」―長期の療養を必要とする患者が入院する介護療養病床の廃止方針が深刻な不安を与えています。旧自公政権が決めた廃止方針ですが、民主党政権が引き継ごうとしているため、批判の声が上がっています。(杉本恒如)


 民主党は昨年の総選挙前の政策集に「療養病床を削減する介護療養病床再編計画を中止」すると明記。政権公約(マニフェスト)にも「療養病床削減計画を凍結」と書きました。ところが1月27日の参院予算委員会で長妻昭厚生労働相が「基本的に(介護療養病床の)廃止というような方向性は変わりません」と答弁したのです。

 療養病床を削減する方針を決めたのは、社会保障費の削減を進めた自公政権です。2011年度末までに医療保険適用の医療療養病床を25万床から15万床に減らし、介護保険適用の介護療養病床を13万床からゼロにするという計画を06年に決定しました。国民の反撃を受け、医療療養病床は各都道府県の目標に即して22万床程度残す方針に転換しましたが、介護療養病床の廃止は変更されていません。

 廃止方針を追認した長妻厚労相の答弁に、高齢者医療に力を注ぐ福岡県大牟田市みさき病院の山田智院長は憤ります。「公約違反ですよ。療養病床を残すという政策を民主党が出して私は歓迎したんです。それなのになくすなんて、おかしい」

 介護療養病床をなくすと、胃ろうの人など医療と介護の両方を必要とする患者の行き場所が本当になくなってしまう―。山田院長は強く懸念しています。

 医療療養病床では、胃ろうの患者は「医療の必要性が低い」とされて診療報酬が低いため入院を敬遠されがちです。しかし、実態は要介護度が高いだけでなく、嘔吐(おうと)への対応など医療行為が必要なため、特養ホームにも入れません。介護療養病床の転換先とされる転換型老健(介護療養型老人保健施設)には、転換前に比べ医師が3分の1しかおらず、24時間の対応ができません。

 「こういう患者の受け皿が介護療養病床なのです。この人たちを難民にしないために、民主党は公約を守って介護療養病床を残すべきです」と山田院長は話します。


 療養病床 緊急の治療が必要な患者は一般病床に入院した後、回復期リハビリ病床での治療を経て、長期にわたり療養を必要とする場合に療養病床に移ります。介護療養病床が廃止されると、医療の必要性が低いと区分された患者は介護施設か在宅に移るしかありません。

 胃ろう 口から十分に栄養を取れない場合に、おなかと胃に小さな穴をつくり、チューブを通して栄養を摂取すること。



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