2010年2月18日(木)「しんぶん赤旗」
仏、核影響を人体実験
61年 サハラ砂漠で実施
軍機密文書
フランスが行った核実験で仏軍兵士を「人体実験」に利用した実態の全容が、軍の機密文書で明らかになりました。(山田芳進)
数百人の兵士を直後の爆心地に
問題の核実験は、1961年4月25日、当時フランス領だったアルジェリアのサハラ砂漠・レガーヌで実施された地上核爆発実験「緑のトビネズミ作戦」のこと。
同作戦については、長らく公にされることはありませんでしたが、98年2月5日発売の週刊誌『ヌーベル・オプセルバトゥール』が作戦の一部についてスクープ報道。今回公表された機密文書は、98年に作成されたものとみられ、当時の報道を裏付ける形となりました。
同文書によると、作戦は、核爆弾の使用を想定し、兵士に与える身体的・心理的影響を調査することが目的。数百人の兵士が、爆発20分後に爆心地から650メートルまで徒歩で、戦車部隊は爆心地300メートル以内に前進させられました。作戦は3時間続きました。
そして「(防毒)マスクは必要ない」「特別な予防はしなくても、(被爆地に)短期間なら滞在できる」などの結論を引き出しました。
同文書は、核実験被害者の支援活動も行う「平和と紛争に関する資料研究センター」(CDRPC=84年創立、本部リヨン)が入手したもの。先週発売の機関紙の最新号にその一部を発表、またパリジャン紙が16日付でホームページに260ページの全文を公表しました。
フランス国防省は07年、このような作戦があったことは認めつつ、関係者の被ばく線量は、日常生活で年間に受ける量と変わらず、健康に影響はないとの立場を示していました。
CDRPCのブブレ理事長はパリジャン紙に対し「作戦に参加した人間の社会的・医学的影響を一切考慮に入れないというのは、犯罪的だ」と糾弾しました。
フランスは、60年2月13日の第1回から96年まで、サハラ砂漠や南太平洋で210回の核実験を実施。うち4回の地上核実験をサハラ砂漠で行っています。
今回公表された文書について、モラン国防相は「知らない」としていますが、文書には全4巻の第1巻と書かれており、全容の解明が待たれます。
■関連キーワード