2010年2月7日(日)「しんぶん赤旗」

主張

金融改革

規制の具体化を国際協力で


 金融への規制強化の動きが強まっています。オバマ米大統領が先月発表した金融規制案は大きな反響を呼んでいます。欧州連合(EU)もフランスやイギリスの主導で、世界的な規制強化を呼びかけています。

銀行の投機を禁止へ

 今年の世界経済フォーラム(ダボス会議)は、金融への規制強化が世界の流れであることを強く印象づけました。各国の政府首脳や政財界関係者が集まる会議で、銀行など金融機関の経営者らが批判の矢面に立たされました。

 サルコジ仏大統領は開幕演説で「基本に戻ろう、銀行家の仕事は投機ではない」と述べました。金融の“ルール”を強調し、投機への課税の必要を指摘し、オバマ提案を支持しました。

 オバマ大統領は、預金を扱い公的制度で守られる銀行が投機に走るのを禁止しようとしています。

 一昨年の「リーマン・ショック」で金融危機が一気に噴き出しました。長年の規制緩和で投機の手段と化した金融が、どれほど危険かが明らかになりました。世界有数の金融機関が危機に直面し、救済のために米欧の政府が巨額の税金を投入しました。危機は実体経済を大きく揺さぶり、各国で失業が大問題になっています。

 危機を二度と起こさせない実効ある措置が各国政府や国際機関に迫られています。主要20カ国・地域グループ(G20)が創設され、金融改革の議論が進められました。しかし、各国の思惑の違いもあり、改革は思うようには進んでいません。

 そのすきをぬって金融機関はふたたび大もうけに走っています。米投資銀行トップのゴールドマン・サックスは昨年第4四半期に過去最高の利益をあげました。銀行などの役員に高い報酬が支払われました。国民の生活苦をよそに、危機を引き起こした側が税金に支えられてもうけ続けています。

 世論の反発を受け、欧州では役員報酬への課税が強化されました。オバマ大統領も投入した税金を取り戻すとして、「金融危機責任税」の導入を打ち出しました。

 欧州では、銀行の破たんに備えて銀行への課税による基金創設をはじめ、温暖化や貧困対策などを念頭においた国際的な金融取引課税を求める声も強まっています。EUは1月のサミットで国際通貨基金(IMF)に検討を求め、IMFもG20の提案も踏まえて課税を検討しています。

ビジョン欠く日本

 金融規制には国際協力が不可欠です。それにもかかわらず、日本政府は有効なビジョンを示せていません。日本は1990年代に米国に追いつこうと規制を緩和する「金融ビッグバン」に踏み切り、金融の投機化を進めました。ただ、欧米に出遅れたことから、今回の危機では金融機関の痛みが比較的小さいとされ、政府も業界も鈍い対応にとどまっています。

 金融審議会の基本問題懇談会が昨年12月に出した報告は、「90年代から続いている複線的金融システム構築の取り組みを継続する」として、規制緩和と投機拡大の路線継続を主張しました。

 これでは、世界的な改革の足を日本が引っ張ることになります。日本もいまこそ自由化路線を見直し、投機ではなく実体経済に貢献する金融へ転換すべきです。



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