2010年2月7日(日)「しんぶん赤旗」

米兵放火 賠償未払い

横須賀 8年前の事件

米国 「見舞金」出さず 日本 補償額決めず


 2002年7月27日に神奈川県内に所有する貸家を米兵に放火された男性に対し、事件から8年近く経過した現在も損害賠償金が支払われていないことが6日までにわかりました。男性が弁護士に相談し、明らかになりました。


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(写真)米兵による放火事件が起きた横須賀市にある米海軍横須賀基地ゲート=2月

 放火事件が起きたのは、男性が所有する同県横須賀市のマンションの一室。放火したのは賃貸人の米兵ではなく、留守中に出入りしていた別の米兵でした。賃貸人の米兵は職務で海外に出航中でした。

 事件後、防衛庁(当時)は男性に連絡。米兵らの「公務外」の事件・事故に関する請求権について規定した日米地位協定18条6項にもとづき、米側に補償を申請するようすすめました。

 男性は翌03年12月26日、損害賠償請求書などを横浜防衛施設局に提出しましたが、現在に至っても賠償金は支払われていません。

 被害者によると、補償申請後、防衛省側からいっさい連絡はなく、被害者側が年に1回問い合わせていました。その際、具体的な説明はなかったといいます。男性の妻は「補償について内情もシステムもわからず、防衛省を信じていたのに」と憤ります。

 1995年のSACO(沖縄に関する特別行動委員会)合意で、被害者が損害賠償訴訟を起こした場合、日本政府は米側が決定する「見舞金」の額と、確定判決が命じた額との差額を穴埋めするよう努力する義務を負うことになりました。しかし、日本政府は「判決が確定しても、見舞金が支払われない限り差額は払えない」としています。

 見舞金を支払うか否かは、米国の意向次第となっており、そのため、米兵犯罪による圧倒的多数の被害者が、見舞金も賠償金も受けられないという事態になっています。

 米兵犯罪被害者の裁判に携わる高橋宏弁護士は「こんな状態ではみんな泣き寝入りになってしまう」といいます。

 前述の事件は警察発表の放火件数に含まれていません。一方、米兵は軍内部で処分を受けたことが確認されています。高橋弁護士は「米兵犯罪はよく『氷山の一角』といわれるが、それをよく裏付けている事件だ」と指摘します。高橋弁護士らは米側が早急に支払うよう、防衛省に要求しています。



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