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2010年1月8日(金)「しんぶん赤旗」

米核態勢見直し延期

議会への報告 3月1日に

政府内対立の報道も


 米国のオバマ政権が現在進めている「核態勢見直し」(NPR)の議会に対する報告が、当初予定の2月1日から3月1日に延期されることが分かりました。政権内の意見対立が主要な要因と見られる一方、現在ロシアと進める新しい戦略兵器削減条約(START)の交渉との関連も指摘されています。(山崎伸治)


 NPRの策定に携わるミラー筆頭副国防次官(政策担当)が12月29日付で上院軍事委員会レビン委員長らに書簡を送り、報告の1カ月延期を通告しました。米外交専門誌『フォーリン・ポリシー』の電子版「ケーブル」が書簡を入手、5日に公表しました。

 書簡は延期の理由について「問題の複雑さ」しかあげていませんが、米メディアはこの間、NPRをめぐるオバマ政権内の意見対立を指摘しています。

 12月27日付の米紙シカゴ・トリビューンは「ペンタゴンその他から、核兵器の数を減らし、その役割を狭めるというオバマ政権の提案を押し戻す動きがある」と指摘。「核兵器のない世界」をめざす同政権を「行き過ぎ」と抵抗する声を紹介しています。

 前掲「ケーブル」はNPRをめぐる論争として、「先制使用」政策を放棄するかどうか、保有する核兵器の数をいくつにするか、「核兵器のない世界」という目標をどこまで反映させるか―をあげています。

 またNPRの公表が、ロシアとのSTART後継条約交渉が大詰めを迎える時期と重なったことも影響しています。

 41人の共和党および無所属の上院議員が12月中旬、オバマ氏に書簡を送り、核兵器の「近代化」を進める方針を示さなければ、START後継条約の批准に賛成しないと“警告”しました。定数100の上院では3分の2、67人の賛成がなければ条約は批准されません。

 核兵器の「近代化」はNPRに盛り込まれる重要課題の一つです。オバマ政権は2010現会計年度(09年10月〜10年9月)予算で新型核兵器開発を削除しましたが、核研究所の「近代化」計画には予算をつけるなど、含みを残しています。

 包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准問題とあわせ、NPR策定は上院の動きもにらんだものとなっています。


 NPR ニュークリア・ポスチャー・レビューのことで日本語では核態勢見直しと訳されています。向こう10年間の米軍の核政策、核戦略の基本を定めるもの。ソ連崩壊後の新しい戦略として1994年にクリントン政権が実施。前回、2002年にブッシュ政権が策定したものは、少なくとも七つの国に対して、核兵器使用計画をたてていました。



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