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2010年1月1日(金)「しんぶん赤旗」

「EU大統領」きょう始動

経済戦略・対温暖化… 試される手腕


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 ヘルマン・ファンロンパイ初代「EU大統領」(欧州連合首脳会議の議長)が1日、公式に執務を始めます。経済立て直しの面でも温暖化対策など世界の中での役割の面でも、欧州連合(EU)が正念場を迎えたなかでのスタートです。(ロンドン=小玉純一)

 「(欧州の)社会的モデルと地球自体の生き残りが、われわれにかかっている」―。ファンロンパイ氏指名後、最初の演説の場は12月10日、ボンで催された欧州の中道右派指導者会議でした。

 同氏は「世界でEUが役割を果たし、欧州型の成果を守るため、強い経済が必要だ」と指摘。予測される成長率1%を倍加させ、「より環境に優しい知識集約型」の成長をめざす考えを示しました。そのため、経済戦略を討議する非公式首脳会議を2月上旬に招集する意向を表明しています。

 EUは首尾よい成果に乏しかった2010年までの経済戦略(リスボン戦略)を総括し、後継の「EU2020戦略」を今年夏をめどに策定の予定です。

 ファンロンパイ氏はまた、当時コペンハーゲンで開催中の温暖化対策の国連会議について「その合意がある種の世界統治の基礎を与える」と期待しました。しかし結末は欧州にとっては「失望」(バローゾ欧州委員長)でした。

 「欧州は、米、中国、インド、ブラジル、南アフリカの同盟の蚊帳の外に置かれた」(仏紙ルモンド)、「新興国が米国と妥結した最終会合に欧州は招かれさえしなかった」(英紙フィナンシャル・タイムズ)と欧州各紙は「欧州の影響力の限界」を指摘します。

 EU加盟国は現在27。ファンロンパイ氏はさらなるEU拡大もめざします。

 フィナンシャル・タイムズ23日付社説はいいます。「欧州が世界的プレーヤーになりたいなら共に働かなくてはならない。リスボン条約は、それを保障しない。決め手は協力する指導者たちの政治的意思だ」

 世界的な知名度は低いものの政治的調整能力を買われて指名されたファンロンパイ氏の手腕が試されます。


 「EU大統領」 EUの新基本条約・リスボン条約が12月1日に発効したのに伴い新設。正式名称は欧州理事会議長。任期は2年半で1回再任可。EU首脳会議を準備・主催し国際的首脳会議にEU代表として出席します。従来の半年輪番制の議長国は継続され、今年前半はスペインが担当し、各理事会を主催します。ただし首脳会議の議長は「EU大統領」、外相理事会の議長は新設の「EU外相」(EU外交安全保障上級代表)が務めます。「EU外相」は英国出身のキャサリン・アシュトン氏が指名されています。


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