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2009年12月26日(土)「しんぶん赤旗」

主張

政府予算案

まだ聖域にメスが入らない


 鳩山内閣が来年度の政府予算案を決めました。鳩山由紀夫首相は「何よりも人の命を大切にし、国民生活を守る政治を実現するため」の予算だとのべています。

一部前進はあるものの

 自公政権は財界とアメリカ言いなりの政治を進めるために、自ら招いた財政破たんのツケを「構造改革」の名で国民に押し付けてきました。社会保障の自然増を毎年2200億円も削減し、庶民増税を進めるなど命と暮らしをないがしろにする野蛮なやり方でした。

 予算案には部分的には「構造改革」路線を改める中身が含まれています。子ども手当や「高校無償化」、診療報酬の増額、生活保護の母子加算の復活・継続や地方交付税の増額などです。自公政権を退場させた国民の審判と粘り強い運動が後押しした結果です。

 それぞれ、大臣が成果を強調しています。「100点は超えたと思っている」(川端達夫文部科学相)、「200点満点の成果だ」(原口一博総務相)―。

 しかし、例えば診療報酬の本体は1・55%の引き上げにとどまりました。小泉内閣以降、トータルで8%近くも削られており、もっと明確な引き上げが必要です。「医療崩壊」の阻止には、まったく不十分です。おまけに「開業医から勤務医に振り向ける」という、実態を無視した「事業仕分け」の議論にもとづいて、開業医の再診料を引き下げようとしています。関係者の分断を図るのは、「構造改革」路線をひきずった卑劣なやり方にほかなりません。

 後期高齢者医療制度の廃止も、障害者自立支援法の応益負担の廃止も先送りしています。生活保護の母子加算は復活しても老齢加算は復活させていません。切実な雇用保険の全国延長給付にも踏み切りませんでした。

 何より、全体に共通する大きな懸念は財源です。

 公立高校の授業料無料化など「高校無償化」の財源には、民主党のマニフェストで廃止しないと明記している「特定扶養控除」を縮減して回します。

 92兆円の歳出に対して税収は37兆円、新規国債が44兆円で、その差を埋める10兆円以上を特別会計の「埋蔵金」から引っ張ります。特別会計を見直して無駄遣いを正すことは大事ですが、巨額の「埋蔵金」が毎年わいて出るわけではありません。今後は財源をどうするのか、極めて不透明です。

 加えて2011年度には、子ども手当の全額支給、高速道路の段階的な無料化など、数兆円規模で歳出を増やしていく計画です。いまのままでは、行き詰まりが目に見えています。

高まる増税への不安

 総選挙のときにも、民主党の公約を実現する財源に「不安を感じる」人が8割を超えていました。いずれ消費税の増税が待っているのではないかという不安です。

 鳩山内閣は任期中の消費税増税を封印していますが、来年度予算案を見る限り、国民の不安はいっそう高まらざるを得ません。

 根本の問題は、自公政権が聖域にしてきた軍事費にも、大企業・大資産家を優遇する税制にもメスを入れられなかったことです。二つの聖域にメスを入れ、将来とも消費税増税に頼らずに暮らしの予算を充実させる財政運営へと、大きく転換する必要があります。


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