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2009年12月12日(土)「しんぶん赤旗」

世界と日本 25回党大会決議案から

ASEAN 平和共同体

大国支配の時代 終わった


 米国、中国、ロシア…並み居る大国が東アジア地域秩序づくりの「運転手」役だと認める東南アジア諸国連合(ASEAN)。中小10カ国の連合体であるASEANが果たしている役割は、大国こそが世界秩序を決める、という“常識”が時代遅れである証拠です。その役割に大きな力を発揮しているのが、仮想敵を持たない東南アジア友好協力条約(TAC)です。


戦争放棄と非核

 昨年12月、2015年までに「政治・安全保障」「経済」「社会・文化」の三つの柱からなる共同体の実現を目指すASEAN憲章が発効しました。今年10月には、「域内の人権擁護に責任を負う包括的機構に進化していく」とする政府間人権委員会が発足しました。

 ASEANが創立された1967年は米国によるベトナム侵略戦争のさなか。タイとフィリピンからは米軍機が出撃。さらに、植民地支配からの独立から間もない各国間に民族紛争や領土紛争が絶えませんでした。

 対立と紛争から抜け出すために、東南アジア5カ国(インドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、マレーシア)はASEAN創立による地域協力の道を選びます。

 平和に向けた協力は75年のベトナム侵略戦争終結後に本格化します。76年に「戦争放棄」を明記したTACが締結され、タイとフィリピンの米軍基地は相次いで撤去されました。95年には東南アジア非核兵器地帯条約が締結されています。

誰にも門戸開放

 ASEANには84年にブルネイ、95年から99年にかけてベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジアが加盟し、東南アジア全域の協力体制が整いました。

 10月にタイで開かれた第4回東アジア首脳会議は、「ASEANが推進力となり、繁栄し、調和のとれた東アジアの構築に寄与し続ける」ことを改めて確認。11月にはシンガポールで、米国とASEANが初めての首脳会議を開催、「ASEAN中心の重要性を再確認」しました。

 ASEANのスリン事務局長は「冷戦終結後、中小国家のASEANは、誰にも脅威を与えずに、われわれのフォーラムに“どうぞ参加してください”という姿勢で域外協力を進めることで、域外国からの信頼を得た」と語ったことがあります。

 現在、ASEANを中心とする協力の枠は、ASEAN+3(日中韓)、安全保障面でのASEAN地域フォーラム(ARF)、東アジア首脳会議など、重層的に拡大。これらの会合では、東アジアの地域協力でASEANが「運転手」「推進役」を務めることが確認されています。

 たとえば94年に始まったARFは、東アジアのすべての国が安全保障問題を話し合える唯一の多国間の枠組みです。(1)信頼醸成(2)予防外交(3)紛争解決―の3段階で平和を構築するのが目的です。

 参加国はカナダを除き、すべてTAC加入国。北朝鮮も参加し、さまざまな懸案を抱える国が率直な意見交換をする貴重な場です。

9条と理念共有

 TACは、ASEANの基本条約とされます。これに米中ロなど域外の大国が加入したことは、ASEANが「運転手」役を確保する上で重要な役割を果たしています。

 タイとカンボジアの間では昨年来、国境地帯にあるヒンズー教寺院跡「プレアビヒア」の領有をめぐる対立が再燃しています。

 スリン事務局長は11月、ASEAN各国外相に書簡を送り、TACに基づいた平和的解決を要請。タイとカンボジアは国防相出席の国境画定委員会を開き、国境問題を平和的に解決することを確認しました。

 スリン事務局長は本紙のインタビューで、「TACと日本の憲法9条はその狙いがよく似ています。地域の国際関係で友好と規範の枠組みを設けるという点、紛争解決にあたり平和的手段、不可侵、政治協力を順守するという点などです」と述べています。

TACの内容

・締約国の国民間の永久の平和、友好、協力を促進

・すべての国の独立、主権、平等、領土保全、主体性の相互尊重

・国内問題への相互不干渉

・紛争の平和的手段による解決

・武力による威嚇と武力行使の放棄

・東南アジアの平和な共同体の基礎を強化


 ASEAN(10カ国)タイ、インドネシア、フィリピン、マレーシア、シンガポール、ブルネイ、ベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジア

 東アジア首脳会議(ASEAN+6カ国)日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランド

 TAC(ASEAN+42カ国=加入を表明した国を含む*)日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランド、パプアニューギニア、スリランカ、モンゴル、ロシア、東ティモール、バングラデシュ、フランス、パキスタン、北朝鮮、米国、EU(27カ国)*

図

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