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2009年12月10日(木)「しんぶん赤旗」

COP15の課題(下)

笠井亮衆院議員に聞く

日本停滞12年

EUに学び対策早く

人類的課題へ国際合意求める


日本の姿勢

 日本の交渉姿勢に期待されるような変化が見られない根底には、日本の温暖化対策が主な先進国の中で特に遅れている実態があります。京都議定書採択から12年がたちますが、日本には温暖化対策のための制度が、ほとんど存在しません。

 産業界に温室効果ガス削減の法的責任をもたせる政府との公的削減協定も、雇用拡大にもつながる自然エネルギーの本格的導入の計画も、それを支えるしっかりした電力固定価格買い取り制度もありません。環境税も排出量取引制度も導入されないできました。

 それは、自公政権が、温暖化対策の推進に反対する財界のいいなりになり、京都議定書から離脱した米ブッシュ政権に追従して、対策をなおざりにしてきた結果です。

 昨年3月に私が団長を務めた日本共産党の欧州調査で分かったことですが、ホンダ、日産、トヨタ、NEC、パナソニックといった日本の大企業は、英国では政府と業界・各企業との削減協定に参加しているのです。

 日本経団連などはまた「日本のエネルギー効率は世界一だ」と主張し、いま以上の削減努力はコストがかかって無理だとも言います。ところが、わが党の市田忠義書記局長が11月24日の国会質問で明らかにしたように、物価を調整した購買力平価でみたGDPあたりのCO2排出量では、日本はEU(欧州連合)27カ国の平均排出量を上回ります。

 電力1キロワット当たりのCO2排出量では、OECD(経済協力開発機構)30カ国中、排出量の少ない方から数えて20位です。しかも日本以外の多くの国の状況は急速に改善され、日本の停滞が目立ちます。

役割の発揮

 日本の温室効果ガスの8割は産業部門が排出しています。他の国と同様に、家庭が使う電力を電力会社の排出分として計算すれば9割です。排出は一部の大規模事業所に集中し、排出量の報告義務を持つ大口排出事業所7700余で7割にも達します。

 ここで対策をとれるかどうかが、大幅削減のカギを握ります。そのために公的協定が不可欠だし、削減促進の補助的手段として、環境税や排出量取引制度が課題になります。

 民主党政権には、鳩山由紀夫首相の「25%削減」演説はあるものの、それを裏付ける温暖化対策の閣議決定は、まだありません。いまある閣議決定は麻生内閣時代のものです。EUをはじめ多くの国は温暖化対策の制度を十数年かけて積み上げてきましたが、日本は、その経験に学びつつ、早急に総合的制度を確立しなければなりません。

 温暖化対策に逆行するといわれる高速道路料金の無料化や、エネルギーの税負担の引き下げなど、多くの矛盾点・問題点を民主党政権は抱えています。自公前政権が温暖化対策の切り札としてきた原発推進も、そのまま引き継ぎ、「事業仕分け」でも聖域化して多額の税金を投入し、技術的にも未確立で安全性にも問題がある原発の新増設を推進しています。

 私たちは、こうした点をただしつつ、一日も早い総合的な温暖化対策の制度化を実現することで、日本が温暖化対策で国際的にも確信をもってリードする役割を発揮できるよう求めていきたいと考えます。

ポイントは

 COP15が最終的にどうなるかは予断を許しませんが、特に次の点が注目されます。

 一つは、科学的知見に立ち、世界の温室効果ガス総排出量を遅くない時期に減少に転じさせ、地球の平均気温の上昇を危険な温暖化を招かないよう2度未満に抑える点で、合意を確立することです。

 二つ目は、先進国全体の削減量が、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第4次報告で指摘された90年比25〜40%減の範囲に入り、しかもできるだけ大きな削減量となるよう、先進国が削減中期目標を高めることです。EUが最大目標として掲げる30%削減を約束するのは当然だと思いますが、一国で世界の2割を排出している米国が90年比4%の削減目標でとどまるかどうかは大きく問われます。

 三つ目は途上国の側の対応です。中国、インドなど新興国の排出量が急増しているもと、削減努力をしなかった場合に比較して排出量をどのぐらい削減する方向をめざすのかが、注目されています。

 新興国の排出には多国籍企業も深くかかわっており、そうした企業に社会的責任を果たすよう求めることも大事でしょう。途上国の大幅な削減行動を支えるには、途上国への公的な資金援助の仕組みや国際連帯税など財源を確立し、技術移転、途上国にかかわる排出量取引のルール、森林保全・土地利用の取り組みの検証などがポイントとなります。

 こうした点に着目しながら、温暖化対策に真剣に取り組む日本の勢力や考えの存在をアピールし、世界中から集まる各国政府や専門家、NGO(非政府組織)などとも交流を深めつつ、人類の課題に取り組む国際交渉のダイナミズムに触れて、日本の温暖化対策の推進に生かしたいと考えています。(おわり)


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