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2009年12月11日(金)「しんぶん赤旗」

誓約書 「障害年金不支給でも異議申し立てしません」

社保事務所が強要

本紙指摘に 社保庁「是正する」


 一部の社会保険事務所で、障害年金の請求時に「さかのぼって支給されなくても異議申し立てをしません」という趣旨の事実上の“誓約書”の提出を請求者に強要してきたことが明らかになりました。本紙の指摘に社会保険庁は10日までに謝罪し、是正措置をとると表明しました。


 11月、難病の男性労働者が神奈川県内の社会保険事務所を訪れ、同年金の請求手続きをしようとしました。同事務所の職員は必要書類とともに「障害給付裁定請求事由にかかる申出書」への署名・押印を求めました。

 男性は、この書類の意味を質問。職員は「さかのぼって5年分支給される年金の不支給が決定されても、異議を申し立てないというものです」と説明。男性は拒否しました。職員は「それならば」と、その書類の端に、不支給が決定された場合、「(不服)審査請求をします」という文章を手書きで記入するように指示しました。

 本紙の「なぜこんな書類に署名・押印させるのか」との指摘に、社会保険庁の担当者は「書類は本庁で作成したものだが、神奈川県の社会保険事務所の取り扱いは間違っている。申し訳ありません」と陳謝しました。

 同担当者は、この書類は本来、不支給が決定された段階で、請求者に不服審査をするかどうかを選択するときの便宜を図るものと説明。そのうえで、「各県に周知して、誤った取り扱いがないようにしたい」(年金保険課)と答えました。

支給抑制路線の転換を

 今回の事例の背景には、自公政権以来の年金支給抑制路線が見え隠れしています。

 今回、障害年金の請求をした難病の男性は、不況を理由にした賃金カットや借金返済のため、実際の賃金の手取りは月5万円前後。長期の闘病や厳しい現場労働、低収入に苦しんできた男性にとって、今回の請求は、必死の思いで行ったものでした。

 この請求手続きに、記者も同行しました。手続きにかかる時間と労力、費用は想像以上でした。この男性の場合、手続きのために仕事を4日以上休まざるをえませんでした。片道2時間の病院での受診などが要求され、二つ必要な診断書は1通5250円(全額自己負担)かかりました。交通費も1回数千円です。

 社会保険庁の担当者(年金保険課)は、他の障害・疾病などと区別して「いわゆる難病」の認定基準があることを指摘。そこには「(3級障害について)軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの。例えば、軽い家事、事務など」と記述されています。男性は明らかにその基準に該当すると思われます。

 しかし、社会保険事務所では、そんな説明はありませんでした。繰り返されたのは「厚生労働省の医師が審査するので、支給されるかどうかわからない」という言葉でした。年金支給抑制路線の転換が求められています。(今田真人)


 障害年金 障害者や難病患者に支給される年金。厚生年金に加入する人には、平均標準報酬額(給与とほぼ同じ意味)に比例する障害厚生年金が支給されます。障害の程度に応じて、1級障害から3級障害の3種類の年金があります。3級障害の年金は月約5万円の最低保障があり、受給資格が支給開始前に発生していれば、最大5年分がさかのぼって支給されます。1級と2級は別に障害基礎年金(月8万円余か6万円余の定額)も支給されます。



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