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2009年12月7日(月)「しんぶん赤旗」

取り調べ可視化 早く

冤罪被害者 一堂に

鹿児島・志布志で集会


 取り調べの全面録画(可視化)を求める市民集会が6日、鹿児島県志布志市で開かれました。「志布志事件」や「足利事件」など冤罪(えんざい)の被害者が一堂に会し、密室の取り調べで「自白」を強要される実態を報告。「取り調べの全過程の可視化」の必要性を訴えました。主催は鹿児島県弁護士会。


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(写真)壇上に並び、取り調べの実態を語った冤罪被害者の人たち=6日、鹿児島県志布志市

 再審公判中の「足利事件」の佐藤博史弁護士が基調講演し、「志布志事件のたたかいが、力を与えた」として、再審に至る経緯などについて報告しました。

 「足利事件」の菅家利和氏、志布志事件の藤山忠氏ら12氏、「踏み字事件」の川畑幸夫氏、「氷見事件」の柳原浩氏、「布川事件」の桜井昌司氏、「甲山事件」の山田悦子氏が、取り調べの実態を詳しく報告。「全面可視化がないと冤罪被害はいつまでもなくならない」(菅家氏)、「裁判員制度と可視化は同時セットであるべきだ。早く成立させてほしい」(藤山氏)と語りました。

 集会には国会議員も参加し、日本共産党を代表して仁比聡平参院議員・比例予定候補があいさつ。「取り調べの無法をこのままにしていては、日本社会は前に進まない。可視化を実現するために全力を尽くしたい」とのべました。

 集会では、「取り調べの全面録画は、密室での違法・不当な取り調べを抑止し、冤罪の発生を防止することに資する」として、国に対し、制度の立法化を強く求めたアピールを採択しました。


警察の横暴 証言次々

 6日の市民集会は、冤罪(えんざい)被害者が無実の人を自白に追い込む警察の捜査手法の数々を明らかにし、取り調べの可視化が待ったなしの課題であることを浮き彫りにしました。

 「一日中、刑事は『お前、子どもを殺したな』といい、私は『やってない』の繰り返し。髪の毛をつかまれ、机の下で足をけられ、悔しくて涙が出た」―足利事件の菅家利和さんが語った、1991年12月1日の取り調べの様子です。容疑を否定しても聞き入れない―、共通する体験でした。

 「家族もお前がやったと思っている」など家族との分断も常とう手段です。志布志事件の川畑幸夫さんは「踏み字」を強制されました。同事件の被害者の中には「警察は話を聞いてくれない。妻と庭の木で首をつろうとした」ほどに追い詰められ、さらに入水自殺まで図りました。怒鳴り、被疑者を叩(たた)き、威圧する「叩き割り」も明らかに。

 富山県の氷見事件では、柳原浩さんが容疑も知らされずに1日14時間も取調室で拘束されました。「取調室の壁が迫ってきて、怒鳴り声が頭に響いてくる感じ。もう取調室に行きたくない」と、2日目には自殺を考え、3日目には気絶しました。

 詐術的なアリバイ崩しが行われていました。布川事件(最高裁で再審請求中)の桜井昌司さんは「事件があった時間、私が兄の家にいたと言っても、刑事は『お前の兄は、来ていないといっている』といい、アリバイを調べもしなかった」と証言しました。

 北海道警釧路方面元本部長の原田宏二さんは「日本の刑事司法には『自白が証拠の王』という自白偏重の考え方とそれを支える長期の勾留制度と代用監獄制度がある。自白偏重を改めない限り、冤罪はなくならない」と指摘しました。


 志布志事件 2003年の鹿児島県議選をめぐって買収会合があったなどとして、県議や住民ら12人が逮捕、起訴された冤罪事件。鹿児島地裁は07年2月、強圧的な取り調べで「自白は信用できない」として全員無罪を言い渡しました。現在、被害者やその家族は県・国に対し、賠償を求めています。



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