2009年12月2日(水)「しんぶん赤旗」
“公平さ期待できず”
堀越事件 弁護団が特別抗告
国公法弾圧堀越事件の弁護団は11月30日、東京高裁の中山隆夫裁判長ら3人の裁判官に対する忌避申し立てが却下されたことを受け、「公平で客観性のある審判を期待できない」として、最高裁に特別抗告を申し立てました。
前回の公判(11月18日)で、弁護側は、新たに開示された公安警察が盗撮したビデオ22本につき、法廷での取り調べを請求、裁判所がこれを却下したことを不服として、忌避を申し立てました。これについても、裁判所は「訴訟を遅延させるのみが目的」として、その場で簡易却下しました。
今回の特別抗告は、忌避の理由の正当性をめぐって、3裁判官を相手取って裁判を求めたもの。
弁護団は、今回の忌避は、たんなる訴訟の遅延目的ではなく、重大な争点となっている捜査の違法性、国公法と人事院規則で禁じている政治活動の違憲性を解明する上で、盗撮ビデオの取り調べは必要不可欠だ、と主張。これを取り調べないのは、公平な裁判を受ける権利の侵害(憲法37条)に当たると指摘しています。
葛飾ビラ配布弾圧判決
各紙が批判
表現の自由脅かす/市民感覚とかけ離れ
葛飾ビラ配布弾圧事件の有罪判決を受け、新聞各紙は解説や社説で「合点いかぬ最高裁判決」(「朝日」1日付社説)などと、判決に強い疑問を投げかけています。
「朝日」社説は「ビラを配っている人を逮捕して刑事罰を求めるのは乱暴すぎる。たいていは住民と話し合えば解決する問題だろう」と強引な逮捕を批判しました。
同社説は「住民や管理人に承諾を得る機会がないとき、玄関の近くにある集合ポストにビラを入れることさえ、逮捕の対象になるのだろうか。こうした疑問への答えを判決からは見いだせない」と、あいまいな司法判断に疑問を呈しています。
東京新聞1日付社説は、国公法弾圧堀越事件や世田谷国公法弾圧事件をあげて、「まるで、『左翼』と呼ばれる人々らが、警察当局に“狙い撃ち”されている印象さえある」と捜査に疑問を呈しました。
同11月30日付夕刊の解説は、立川ビラ弾圧事件(昨年、最高裁で有罪判決)との違いに触れ、「立川事件は、住民の抗議後もビラを配り続けた点が悪質とされたが、荒川(庸生)被告は事件当日まで、苦情を言われたことはなかった」と、突然に逮捕され、有罪とされた異常性を指摘。栃木県の地元紙、下野新聞1日付論説も「経緯には釈然としない」と書きました。
「表現の自由脅かす判決」と題した北海道新聞1日付社説は「疑問の多い判決だ。憲法で保障された権利への配慮を欠き、言論活動を萎縮(いしゅく)させる不安を感じる」「政党ビラの投入は逮捕、拘束され、有罪となるほど悪質な行為なのだろうか。刑事罰を科すのは市民感覚とかけ離れている」と、批判しました。
一連の言論弾圧事件について、日弁連の人権擁護大会や国連の自由権規約委員会が「懸念」を表明したことを各紙が紹介しています。北海道新聞社説は「国際機関からの批判に答える、どんな論法があるのか」と、判決に問いかけています。
日弁連がコメント
日本弁護士連合会は11月30日、同事件の最高裁判決についてコメントを発表しました。
コメントでは、国際人権(自由権)規約委員会が「表現の自由に対するあらゆる不合理な制限を撤廃すべきである」という日本政府への勧告を紹介。
「日弁連は、最高裁に対し、表現の自由の重要性に十分配慮し、国際的な基準を充足する判断を示すよう要望する」とのべています。