文字の大きさ : [] [] []

2009年11月17日(火)「しんぶん赤旗」

113倍の薬価 同一成分の新薬「トレリーフ」

「適正に算定」だって?!

正当化の報告に批判続出

新ルール作成求め差し戻しに

中医協


 「本剤の薬価は適正に算定されたとの結論に至った」――。抗パーキンソン薬「トレリーフ」の薬価算定の妥当性にかんする検討結果について、薬価算定組織(委員長・加藤治文東京医科大教授)は4日、中央社会保険医療協議会(中医協)薬価専門部会に報告。既収載薬の113倍という高薬価にしたことを正当化する報告に、中医協委員や関係者から異論が噴出しています。(堤 由紀子)


厚労省管理官も高薬価を擁護

写真

(写真)名前を変え「新薬」として承認され、113倍の高薬価となったトレリーフ

 大日本住友製薬が発売している抗パーキンソン薬「トレリーフ」は、抗てんかん薬として出回っている「エクセグラン」と同一成分です。ところが同社は、「別効能」による「新薬」として薬価収載を申請。中医協委員は同一成分薬の存在を知らないまま審議し、2月に了承。100ミリグラムあたり38・5円のエクセグランに比べ、4339・6円と薬価が113倍にも跳ね上がりました。

 その後、医療関係者からの批判が巻き起こり、8月26日の中医協総会では、トレリーフの異常な高薬価問題を薬価算定組織で検討するよう求めていました。この検討結果が「本剤(トレリーフのこと)の薬価は適正に算定されたとの結論に至った」として“問題なし”としたのです。

 厚労省の薬剤管理官(事務局)も、“(パーキンソン病の他の薬と比べると)患者にとって負担は変わらない”と高薬価を擁護しました。

もっと安くなるはずと疑問の声

 この報告に委員から「本来はもっと安くなるはずの物が高くなっている。この考え方は容認できない」(安達秀樹・京都府医師会副会長)、「患者の視点が全く抜けている。効能拡大といえるようなことを新薬で、という理屈はまったく理解できない」(白川修二・健康保険組合連合会常務理事)、「ふに落ちない、腹にストンと落ちない。この値段は」(邉見公雄・全国公私病院連盟副会長)、「患者負担の観点からいえば、なるべく安い方がいい」(森田朗・東大大学院法学政治学研究科教授)、など批判が続出しました。

 さらに「効能拡大にするようなものは、ルールを一部見直すべき」(白川委員)、「見直しを含めて検討していくのがいい」(三浦洋嗣委員・日本薬剤師会理事)、「何らかの基準を設けた方がいい」(安達委員)と、見直しを求める声が相次ぎました。

 結局、新たなルールを作るよう薬価算定組織に差し戻しになりました。


密室で決められる算定案

 新医薬品の薬価基準への収載への流れは、図のようになっています。

 製薬メーカーが新薬を薬価基準に収載したいという希望を出すと、厚労省医政局経済課がメーカーにヒアリングして「下裁き」をします。その指導を受けたメーカーは、薬価算定にかかわる資料を同省保険局医療課に提出し、同課で検討して算定原案を作ります。

 この原案について、厚労省に設置された薬価算定組織で検討し、算定案をメーカーに通知します。不服がある場合はメーカーが不服意見書を提出して、算定組織で再検討されます。

 こうしてすべて非公開の場で検討され、薬価の算定案が決められます。この算定案が中医協総会に報告され、了承されると薬価基準に収載されます。中医協委員は、今回のトレリーフのように、重大な情報が知らされないまま承認を求められているのです。

新医薬品の薬価を決める流れ

図


巨大製薬資本の「打ち出の小づち」

高薬価確保のしくみにメスを

 青森・藤代健生病院薬局薬剤師の石田悟さんの話 「薬価は適正に算定された」という報告は、一言でいえば居直りです。今回のトレリーフのように、適応症を獲得し、名前を変えることで「新薬」となって高薬価が確保されるしくみに、厚労省がメスを入れようとしないことの表れです。

 巨大製薬資本は「打ち出の小づち」を手にすることができたと思っているのではないでしょうか。これでは、巨大製薬資本による保険財政の無限の食いつぶしを、厚労省が許すことになります。



■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp