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2009年11月16日(月)「しんぶん赤旗」

主張

世界食料サミット

「食料主権」の現実めざして


 国連食糧農業機関(FAO)の「世界食料サミット」が16日からローマで開かれます。昨年に続いて2年連続の開催となったのは、世界の飢餓人口の増大に、関連諸機関や非政府組織(NGO)が強い危機感を抱いているからです。

 米国発の世界金融・経済危機がとりわけ途上国の人びとに大きくのしかかっています。主要国も影響を色濃く残し、飢餓克服のための支援の動きは鈍いままです。

増える飢餓人口

 「世界食料サミット」は今回が3回目です。1996年の第1回サミット開催当時、世界の飢餓人口は8億3千万人余とされていました。13年後の今日、飢餓人口は10億人を突破しています。昨年からの1年間だけで1億人も増加しています。

 とくにしわ寄せを受けているのが子どもたちです。国連児童基金(ユニセフ)によれば、途上国の5歳未満児の約2億人が栄養不良による発育障害を抱えています。

 第1回食料サミットは、世界の人びとが「飢餓から解放される基本的権利」をもつと宣言しました。世界の飢餓人口を2015年までに半減させるとの目標を決めました。いま、その目標の達成は困難だとみられています。

 その大きな要因が一昨年からの農産物価格の急騰です。背景に投機があることは、金融危機で価格が下落したことからも明らかです。いまコメなど農産物価格が再び上昇傾向をたどっています。

 世界の金融資産総額は140兆ドルなどとされ、金融機関の幹部は金融危機のなかでも高額報酬にありついています。「カネあまり」と飢餓増大の“共存”は世界経済の不公正さを象徴するものであり、けっして放置できません。

 昨年の第2回食料サミットは農産物価格の急騰に際して開かれました。サミットは食料の増産を呼びかけ、とりわけ小規模農家の生産を重視しています。サミットで福田康夫首相(当時)は、日本も食料自給率の向上に「あらゆる努力を払う」と言明しました。

 ところが今回のサミットを前に、世界最大の穀物メジャー幹部が食料自給率の引き上げ努力を否定する発言をしています。米カーギル社の上級副社長は「食料をなんでも自給しようというのはナンセンスだ」(英フィナンシャル・タイムズ紙)とのべました。

 同社をはじめ穀物の生産・加工・流通を支配する巨大多国籍企業は農産物価格の高騰で大もうけしてきました。発言は、各国での食料自給率を向上させる政策が、これら企業のボロもうけの手をしばるとの懸念を吐露したものです。

自給率引き上げこそ

 02年の「食料サミット5年後会合」にあたって世界のNGOが、世界の人びとは自らの食料と農業のあり方を定める権利をもつとする「食料主権」の考えを確立させました。これは飢餓克服にあたっても基本です。「食料システム・政策の中心に、市場や企業の要求ではなく、生産・分配・消費する人びとをすえる」(07年の「食料主権にかんする世界フォーラム」宣言)ものだからです。

 必要なのは、これらの成果を生かして飢餓克服の世界的協力を実際に広げることです。飢餓を抱える途上国はもちろん、各国は食料自給率の引き上げに力を入れることが重要です。



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