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2009年11月11日(水)「しんぶん赤旗」

パレスチナ内部対立なぜ

連立合意の具体化協議が決裂


 イスラエルの占領下に置かれたパレスチナではパレスチナ国家樹立への展望が見えないなかで、PLO(パレスチナ解放機構)主流派ファタハとイスラム武装抵抗組織ハマスがそれぞれ率いる二つの自治政府が対立しています。エジプトを仲介者とした両者の和解協議では今年2月、連立政権樹立に向けた合意が成立しましたが、具体化の協議は10月末に決裂しました。なぜ両者は対立するのか―。(伴安弘、山田芳進、島田峰隆)


地図

 対立の最大の要因は占領者イスラエルへの対応、歴史的にはオスロ合意の評価の違いにさかのぼります。

 1993年のオスロ合意は、PLOとその主流派ファタハが長年の武装闘争に終止符を打ち、イスラエルを国家として承認、パレスチナの自治政府を発足させるというものでした。パレスチナ側の悲願である国家樹立はその後の交渉に委ねるとされました。

 この合意に対し、イスラエルの領土を含むパレスチナ全土の「解放」を掲げるハマスは反発。イスラエルへの武力攻撃・テロを次第に強めていきました。合意を進めようとするファタハは、ハマスの取り締まりでイスラエルとも協力しました。

支援打ち切り

 2006年1月の評議会(国会)選挙ではハマスが勝利しました。ファタハの幹部の腐敗に対する批判でもあったとみられています。

 しかし、ハマスをテロ組織とみる米欧諸国は民主的に選出されたハマス政権のイスラエル不承認などを理由にパレスチナへの支援打ち切りを決定。一方、イスラエルは93年3月以来断続的に行ってきたガザ地区封鎖を強化しました。

 ファタハ側は評議会選挙で敗れたとはいえ、自治政府議長の地位は維持していました。米欧とイスラエルはアッバス議長側には支援を再開し、これがハマスとファタハの対立を深める要因ともなりました。

ガザ軍事制圧

 両者はイスラエルに対する共同の姿勢をとることを求めるパレスチナ内外の圧力のもとで、サウジアラビアの仲介で対立をいったん棚上げ。07年3月にはハマスのハニヤ氏を首相とする統一自治政府ができました。

 しかし、パレスチナ経済が多くを依存している国際的支援の受け取りをめぐるファタハとハマスの対立は武力衝突に発展。ハマスが同年6月にガザ地区を軍事制圧するに至りました。アッバス議長はこれを「クーデター」だと非難し、ファタハ主導の政権を立ち上げました。

和解への動き

 08年12月から今年1月にかけてイスラエル軍が行ったガザ地区侵攻は、直接にはハマスの一掃を狙ったものでした。その狙いが失敗し、ガザ住民の苦難が増す中で和解への動きが顕著になりました。

 アッバス議長は侵攻が続いていた1月19日、ハマスとの連立政府の樹立を提起。2月にはファタハ、ハマスを含むパレスチナの13の組織で和解会議が開かれ、連立政権樹立にむけた合意が成立しました。

 その具体化の協議のなかで、ファタハは9月、来年1月予定の議長・評議会選挙を6月まで延期するとの仲介者エジプトの提案を受け入れました。連立協議のための時間を確保するためでした。

 しかし、ハマスが最終和平案受け入れを渋るなかで、アッバス議長は10月23日、二つの選挙を予定通り来年1月に実施すると表明。反発したハマスは、エジプトが設定した10月26日までの和解案受け入れを拒否しました。


ファタハとハマス

 ファタハはパレスチナ解放機構(PLO)内の最大組織で、1958年ごろに創設されました。

 オスロ合意に基づいて94年にパレスチナ自治政府が発足したあと、96年に自治政府議長、議会に相当するパレスチナ評議会の初選挙が行われました。

 この時はイスラム武装抵抗組織ハマスなどがボイコットしたため、議会選ではファタハが勝利。自治政府の議長にもアラファト氏が選出され、同氏が死去した後の2005年の選挙では、ファタハの議長でもあるアッバスPLO議長が選出されました。

 ハマスは、87年12月に創設され、イスラエル占領下で暮らす貧しい人々や難民に、教育、福祉、医療を提供し、住民に浸透しています。一方で自爆攻撃などイスラエル市民を巻き込む無差別テロをたびたび行ってきました。

 88年8月に制定されたハマス憲章は、イスラエルを含む「パレスチナ全土に神の旗を掲げる」(第6条)とし、「パレスチナ」の全土解放とイスラム国家の樹立を掲げています。

 ただ創設者のヤシン師はイスラエルとの長期停戦による事実上の2国家の受け入れを示唆していました。

 また、ハマスは06年の評議会選挙を前に1年以上、イスラエルと停戦し、選挙後も長期の完全停戦を申し入れるなど、最近では「暴力」に訴える従来の立場からの変化がみられます。

 イスラエルは、PLOの勢力を切り崩すためハマスの母体となった「ムスリム同胞団」を積極的に支援し、誕生後のハマスにもしばらく資金を流入させ、間接的に支援しました。

 06年の選挙で政権に就いたハマスをイスラエルや欧米諸国は封じ込めの対象にしています。しかし、カーター元米大統領をはじめ世界の著名な政治家や外交官らは、ハマスのテロを非難しながらも、パレスチナの一当事者として和平交渉に関与させるべきだと主張しています。

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