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2009年11月1日(日)「しんぶん赤旗」

事業者の指定制度案示す

保育制度改悪 現在の認可制残し


 保育を市場化する新しい保育制度について論議する社会保障審議会少子化対策特別部会の保育第2専門委員会が30日開かれ、厚生労働省は、保育に参入する事業者について、これまでの認可制とは別の新たな指定制度案を示しました。

 現行制度では、国の最低基準を満たした保育所を都道府県が認可します。新しい制度では、認可制は残したまま、新たに指定制度を導入。

 通常保育以外に、一時預かりや保育ママなどの「多様なサービス」の類型ごとに指定基準を設け、基準を満たした施設を都道府県の公金支出の対象とします。

 同省は指定基準について、「サービス量が充分に確保できる」ように「厳しすぎない基準」にする必要があると説明しました。通常保育については現在の国の最低基準を指定基準とします。

 また、現在の認可制度は、指定保育所より質の高い保育所の認可の仕組みとして残すとしています。

 厚労省は、現在、自治体が、国の最低基準を上回る認可基準を独自に設けて、最低基準を満たした施設でも認可しない場合があるとして、4県2政令市の資料を提出。都道府県の裁量によって認可されない施設を「指定」することで、サービス量の確保を図ると説明しています。

 一方で、指定制においても、自治体の施設整備計画の必要量を超える場合は、指定拒否ができる仕組みも考慮すべきだとしています。

 同日の専門委員会では、運営費の使途制限を緩和して、株式会社の配当にも回せるようにする論議もされましたが、意見はまとまりませんでした。


解説

質により保育料に差のおそれ

 厚労省が示した制度案は、現在の認可制を残した上で指定制を導入するというものです。同省は、「認可を受けない指定施設も、質を高めて、できる限り認可化してもらうのが望ましい」と説明しており、認可園は指定園より保育の質の高いものと位置づけられています。

 認可園が指定園より高い質を保つには「インセンティブ(奨励策)」がいるとして、行政が出す運営費の単価設定を高くするなどが必要だとも説明されています。

 取材に対し担当者は、保護者の負担する保育料について、「今後の検討だが、(認可園と指定園では)異なるものになる可能性はある」とのべました。

 そうなった場合、「公的保育」のなかで保育の質によって保育料に差がつくことになります。高い保育料を払えない親は質の低い指定園で我慢するという事態も考えられます。

 厚労省は、現行の仕組みでは都道府県に認可の裁量が認められていて、都道府県が、独自に高い基準を設けたり、財政上の理由や、需要が見込めないなどの理由で認可をしぶるために保育所が増えないといいます。それを指定制導入の理由としています。

 ところが、新しく導入する指定制でも、自治体の整備計画を超えるという理由で、指定を拒否できる仕組みを考えるといいます。それなら、厚労省が問題にする現行の認可の裁量とどう違うのか。

 「指定制ではニーズ(需要)に沿った整備計画が立てられると思う」という発言が委員からでましたが、そんな保障はありません。指定制導入の理由は破たんしているといわざるをえません。

 現行制度で、国が緊急に、潜在需要も含めた整備計画を立て、認可保育所増設を正面に位置づけることこそ、いま一番に必要です。 (西沢亨子)



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