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2009年10月12日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

走れ ふるさと鉄道


 全国各地で住民や自治体に支えられ、第三セクターの「ふるさと鉄道」が存続に努力しています。いずれも、お年寄りの通院、中・高校生の通学などの大切な足であり、豊かな自然や地域の歴史、文化をアピールして乗客を増やし、経営の困難を乗り越えています。福井県と群馬・栃木県から報告します。


好評の女性アテンダント

福井 えちぜん鉄道

地図

 秋の一日。どこまで乗っても何回乗り降りしても800円の1日フリー切符(土・日・祝日のみ発行)を買って、えちぜん鉄道福井駅から三国駅へ向かいました。

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 途中、福井口駅から評判の女性アテンダント(乗務員)が乗車。「こんにちは」のあいさつで乗客らの気分も晴れやかに、子どもには「どこいくの」「楽しみやねー」などと声をかけます。観光客からの「東尋坊へ行くには?」などの質問にもてきぱきと答えていきます。発車間際に走ってくるお年寄りに、さっと駆けより、手をとって乗車をサポートする姿には感動します。

 三国駅で降り、歩いて5分で、船の出入りを決めるために河口の天気模様を確かめた高台、「日和山」に着きます。「出船入船 風みる所は 雨が降っても日和山」と三国節にも謡(うた)われてきました。ここに建つ禅寺は江戸時代に句会が催された所で歌碑も。高見順の生家も近くです。

 勝山永平寺線の終着駅・勝山駅からは、子どもたちに大人気・日本で唯一の恐竜専門の博物館(福井県立恐竜博物館)へバスが運行しています。鉄道ファンの垂涎(すいぜん)の的は勝山駅に留置されている「テキ6形6号」。1920(大正9)年に堺市の梅鉢鉄工所で製造され、動く電気機関車では国内最古とされています。

 3年前に福井市内から坂井市三国町に引っ越した光陽生協クリニック・小児科アレルギー科医師の木村牧子さん(69)は、通勤で利用します。

 「アテンダントが、困っているお年寄りを助けている姿はいいですね。電車では手紙も2、3通書けますし、本も読めます。すごくいい」と電車通勤を楽しんでいます。

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 えちぜん鉄道の前身は京福電鉄です。2度にわたる正面衝突事故をおこした京福電鉄にたいして、国土交通省は2001年7月、鉄道事業で初めての「安全確保に関する事業改善命令」を出し、運行停止に。赤字の同電鉄は県内3路線の経営を投げ出しました。

 「廃線、バス転換」の流れが一気に強まる中、住民、行政、日本共産党などが力をあわせて乗り越え、第三セクター「えちぜん鉄道」として運行がはじまり丸6年。当時、共産党もシンポジウムの開催、県議会での論戦をはじめ、沿線の地方議員が市町村長と懇談し存続のため先頭にたちました。

 えちぜん鉄道の島洋・取締役は語ります。

 「住民、行政、事業者が一体でがんばっている。料金1割引きのサポーターズクラブ会員は3000人。うち料金2割引きになる65歳以上のゴールド会員は800人です。アテンダントは乗るのに不自由な方を手助け、心のふれあいを大切にします。国もがんばっている地方の鉄道・電車にもっと力をいれてほしい」(佐藤正雄・元福井県議)


沿線住民や団体が支える

群馬〜栃木 わたらせ渓谷鉄道

地図

 わたらせ渓谷鉄道は、群馬県桐生市を起点に、みどり市、旧足尾町(栃木県日光市)の間藤駅まで44・1キロを走り、沿線住民、自治体では地域の大切な足として、「がんばれ!わ鉄(愛称)」のとりくみを進めています。

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 今年で開業20周年を迎えた「わ鉄」。明治時代の足尾銅山の歴史とともに生まれ、足尾鉄道、旧国鉄・JR足尾線から引き継ぎ、あかがね(銅)色の車両は地域の誇り。上毛の名峰・赤城山ろくと渡良瀬渓谷を縫う鉄路は、紅葉の名所です。

 水沼駅温泉センター代表取締役の神山登さん(59)は、高校生のとき、通学に利用しました。

 「もっと多くの観光客に鉄道を利用してほしい。沿線人口が減るなかで地域住民の足の確保、鉄道存続につながる。駅のホームが温泉というのも全国的に珍しいし、大切な観光資源です。これからが渓谷美のシーズンです」と神山さん。

 この水沼地区には、官営富岡製糸場とならぶ日本で民間初の水沼製糸所跡もあります。

 「わ鉄」の沿線には、たくさんの鉄道を応援する個人、団体があります。足尾町で「ふるさとウオーキング」に毎年のように参加している斉藤惇さん(81)は、足尾銅山の元労働者。日本共産党の元町議です。

 斉藤さんは「今度のウオーキングは足尾駅集合。同駅は自宅から500メートルくらいですが、間藤駅まで歩き、1駅180円の切符を買って列車に乗り参加します。みんな鉄道利用促進という立場で心をひとつにします。仲間といっしょだと足どりも軽くなる」と元気いっぱい。

 「足尾線廃線の危機に立ち上がった」、地元住民の鉄道存続への熱意は、第三セクターとなった今日でも受け継がれています。

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 「わ鉄」に、若者たちも関心をよせています。沿線で「ワタラセ・アート・プロジェクト」の美術展にとりくむ上原和美さん(23)らは、通洞(つうどう)駅近くの空き店舗にギャラリーをつくり、住民と交流。「今年は春、夏、秋冬に3回の美術展を企画しました。渡良瀬の魅力を知ってもらいたい」といいます。

 9月末には、足尾駅舎(1912年建設)や第1松木川橋梁(きょうりょう)など37件が国の登録有形文化財に答申されました。また終着・間藤駅から3キロほど行くと、足尾環境学習センターで鉱毒汚染など、日本の“公害の原点”にふれることができます。

 沿線の主要都市、桐生の市議会交通対策調査特別委員会は現地調査などに活発に活動しています。副委員長を務める日本共産党の笹井重俊市議(50)は、力を込めます。

 「近く北陸地方に公共交通対策で視察の予定です。お年寄りにやさしく、地域に役立つ鉄道のあり方を考えたい。地方ローカル線はどこでも厳しい経営で、国・県は支援をもっと強化してほしい」(小高平男)


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