2009年10月5日(月)「しんぶん赤旗」
天下り法人 空洞調査撤退
受注独占、仕事は穴だらけ
道路保全技術センター
国土交通省所管の財団法人「道路保全技術センター」(東京都港区)が、同省から独占的に受注してきた国道などの空洞調査から撤退することになりました。ずさんな調査が問題になったためですが、同センターの常勤職員は、いずれも国交省(旧建設省)の天下りです。
同センターは1990年に設立され、2000年以降、国道など道路の陥没事故を未然に防ぐ目的で、路面下の空洞調査をおこなってきました。国交省によると、直轄国道で、空洞調査によって年間約5000カ所の空洞を発見し、陥没事故を防いできたといいます。
ところが、08年度、同センターによる空洞発見が激減する事態に。空洞を見逃していると国会で取り上げられるなど、問題になりました。
同センターは、国交省発注の空洞調査を随意契約で独占的に受注してきました。08年度の受注額は5億4千万円にのぼります。
ところが、道路特定財源のムダづかいが次々と明らかになり、国交省は昨年4月、「天下り先」と批判されていた道路関係公益法人との契約の見直しを実施。同センターについても「民間企業の参入可能な業務を分離発注するなどの民間移行の促進」(道路関係業務の改革方針)としました。
このため、空洞調査は、随意契約から「簡易公募型プロポーザル方式」と呼ばれる契約方式に変更され、これまで同センターが“丸投げ”してきた民間企業とライバル関係になりました。もともと同センターには、技術力がなく、空洞の発見が激減したのです。
国交省は、ことし5月には、同センターの空洞見逃し問題で、第三者による「直轄国道の舗装(路面)に関する保全検討委員会」を設置。空洞調査業務の検証などを検討することになりました。
同検討委員会は、8月4日夜から5日未明にかけ、同センターによる空洞調査がずさんと指摘された東京都内の国道15号の地下2カ所を調査。品川区北品川1丁目は地下約35〜80センチ、港区高輪3丁目は同57〜80センチにわたり、大きな空洞があることを確認しました。
この2カ所は、同センターが08年度の調査では、危険な空洞はないと国交省に報告していたもの。このため、同センターの森永教夫専務理事は同月26日、検討委員会の席上、今後、同省の空洞調査業務の入札に参加しないことを表明しました。
同センターの佐藤信彦理事長は旧建設省技監(技術系官僚のトップ)、森永専務理事は国交省東北地方整備局長、岡部安水理事は同省国土交通大学校副校長と、常勤役員3氏は、いずれも天下り。3氏の報酬は月額92万2千〜84万3千円と高額です。
職員約170人の3割近くが、天下りで、国交省も「業務をスリム化したうえで統合を行う法人」と位置づけています。

