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2009年9月28日(月)「しんぶん赤旗」

こちら社会部

林野庁 水道事業 不透明

伊豆の別荘地 入居者と契約結ばず20年余

管理・徴収は天下り先


地図

 林野庁の天城高原「ふれあいの郷」(静岡県伊豆市)整備事業でつくられた滞在用住宅(別荘、107区画)向けの水道事業で、不透明な運営が続けられているとの訴えが入居者から寄せられました。調べてみると、ずさんな運営が20年余にわたっていることが27日までにわかりました。(徳永慎二)

 林野庁の天城営林署(現伊豆森林管理署)は、1987年に民間企業の伊豆観光開発株式会社(伊豆市)と分水契約を結び、水道施設を敷設。88年から各戸に配水していますが、林野庁側は当初から入居者と水道使用契約を結んでいません。水道施設の管理と料金の徴収は、もっぱら林野庁の有力な天下り先となっている林野弘済会(現日本森林林業振興会)東京支部が行ってきました。

値上げで判明

 入居者から「水道事業の主体がはっきりしない」「安全な水にだれが責任をもつのか」「料金支払先はどこか」などの声があがったのは94年。伊豆観光から料金値上げを通告されたときです。入居者と林野庁側とで協議が続けられましたが、依然としてはっきりしません。98年一部入居者が水道料の支払いを拒否。その後林野庁側が、水道使用契約を結ぶことを約束し、2003年未払い分を納入しました。しかし、契約は結ばれず、入居者は再度支払いを停止。国は2007年支払いを求めて提訴。ことし2月東京地裁は「黙示の契約がある」との国側の主張を採用し、住民が敗訴しました。

 しかし、判決は、「水道供給の主体」が林野庁側と認め、「水道使用料の権利義務関係が把握しにくい」として、双方が水道供給契約を結ぶよう求めました。国はいまだに契約を結んでいません。

写真

(写真)「ふれあいの郷」入り口に立てられた標識=静岡県伊豆市

 一方、敷設された水道の種類は分水契約によると、専用水道。同営林署も「水道法上の専用水道設置のための届出をして」(08年8月の文書)いると明記しています。

国庫入金せず

 ところが、本紙が伊豆市、静岡県に問い合わせると「届け出はない」との返事。林野庁側に見解を聞くと回答はくるくるかわりました。当初は「水道法上の専用水道に該当しないので届け出ていない」、その後、「いったん届け出たが、その必要はないといわれた」となり、「よく調べたら、届け出をしていた」(いずれも関東森林管理局国有林野管理課)にかわりました。しかも、いまなお、専用水道に該当するのかどうか「わからない」(同)といいます。

 国の施設でありながら、水道料金は、国庫には入金されず、直接、伊豆観光に納めているといいます。ところが、未払い料金は国庫歳入金というちぐはぐぶり。

 関東森林管理局の坂井巖企画官は水道供給について「確かに不透明かとは思うが、料金をチョロまかすということはありません」と弁明します。

 元入居者協議会会長の坂本正俊さん(78)は、「林野庁はいいかげんで、うそばかりついている。国は入居者と水道供給契約を結び、徴収した水道料金をどう処理してきたのか明らかにする責任がある」と話しています。


 天城高原「ふれあいの郷」整備事業 1980年代後半から、全国7カ所ですすめられた国の「ふれあいの郷」整備事業の一つ。林野庁が、国有地107区画の借り受け人を募集。抽選で当選した借り受け人(入居者)は同地に自費で別荘を建て、「森林づくり」をすすめます。

 専用水道 水道法で定められた水道。寄宿舎、療養所、社宅などで使われる自家用の水道、または、一般の需要に応じて供給する水道事業以外の水道を指します。給水対象101人以上、1日最大給水量20立方メートル以上のいずれかがあてはまる水道です。さらに政令で、導管口径とその全長、水槽の容量などの基準を定めています。設置者は保健所に事前に申請・届け出の義務があります。


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