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2009年9月14日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPRESS

たった半年 退職強要

新入社員 立つ

1万人が働くコンピューター関連人材派遣グループ
4人で労組加入・団体交渉


 4月に入社したばかりの社員を9月末で退職に追い込む「新卒切り」に対して、新入社員が立ち上がりました。約1万人が働くコンピューター関連の人材派遣グループ(本社・東京都千代田区)では、8月末に退職勧奨を受けた新入社員の男女4人が一人でも入れる労働組合に加入し、団体交渉を始めました。(染矢ゆう子)


 労働組合によると、同グループは「うちは無借金経営」「文系でも体育学部でもちゃんと教育するから大丈夫」と学生を安心させて、4月に約1300人という大量採用を行いました。ところが、直後から9月末までに、社員数を1600人削減するため「退職勧奨」を始めました。

 グループ傘下のA社では、8月27、28の両日、27人の新入社員のうち、19人が会社に呼び出され、「退職願」を渡され、「拒否すればそれだけ倒産が早まる」からと書くよう強要されました。

 「あまりにも突然で頭が真っ白になった」というS郎さん(22)=茨城県龍ケ崎市=。人事担当者が笑いながら話すことに怒りがわき、その場での提出を断りました。

 前日にS郎さんから話を聞いていたT男さん(23)=東京都品川区=は社内に労働組合がないため、社外の一人でも入れる労働組合に相談。同期の社員に声をかけ、提出期限の31日、5人が「やめません」と伝えました。

 その後、「自分たちを物のように扱う姑息(こそく)なやり方は許せない。このまま辞めても何も残らない」と、4人が労働組合に加入し、9月2日に「要求書」を提出、3日から団体交渉を行っています。

 T男さんによると、退職勧奨の際、A社の人事担当は「3月に内定切りを上から指示されたが、法律上の問題から内定切りをやめた」と話したといいます。

 昨年から今年にかけて、新規学校卒業者に対する企業の一方的な内定取り消しが横行し、重大な社会問題になりました。厳しい批判に、国も一方的な内定取り消しに対して、企業名の公表など対策を強めました。

 T男さんは「内定取り消しをすると企業名が公表されるので、それを避けてこの時期の退職勧奨を計画していたのではないか」と指摘しています。

利益のため“使い捨て”

 4人が加入した労働組合の労働相談員の話 退職勧奨を行っているグループは、来年の決算で10%の利益を確保するために、1600人という削減目標を出してきたようです。

 解雇は、労働者とその家族の生活を根底からくつがえす死活の問題です。自らの利益確保のために若い労働者を使い捨てにするグループとA社に対して、人を一人解雇するとはどういうことなのか、厳しく問うていきたい。


 労働組合に加入した新入社員に思いを聞きました。

たたかうためには労組しかない

 文学部出身のT男さん(23)=東京都品川区=は、もともとITに興味があり、「温かい会社」だと思い、入社を決めました。昨年10月から内定者勉強会が始まり、3月までに10日は会社で研修を受けました。

 しかし、入社後は、教育担当の先輩社員が次々と職場を去り、7、8月は月の半分から4分の3が休業。技術が身につかないまま時が過ぎる不安と焦りの毎日でした。

 「入社半年の退職で、再就職に不利が生じるんじゃないか、新しく仕事を探すにも、採用の枠が狭く不安です。個人では何もできない。会社とたたかうためには労働組合しかない」と話します。

私、黙ってるわけにいかない

 体育学部出身のH美さん(23)=千葉県船橋市=は、実家のある千葉県木更津市から通う予定でしたが、人事担当から「引っ越しをしてくれ」と言われて一人暮らしを始めました。一人暮らしにかかった費用は50万円近くになります。「引っ越ししたのに、退職勧奨なんて納得できない。これまでも多くの人が何も言えずにやめていった。私は黙っているわけにはいかないと思いました」

図

■全労連・労働相談ホットライン0120(378)060


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父と険悪。どうつきあえば…

  父は地域でボランティア活動をしていて、近所の人からは「立派なお父さんだね」と言われます。でも、わが子には、「ああしろ、こうしろ」と自分の考えを押し付けます。それが嫌で、1年以上まともに口をきいていません。家を出たいけど、フリーターなので出たくても出られません。父とどう付き合っていったらいいでしょうか。(20歳、女性)

外での別の姿 知ってみては

  あまりに口うるさく「ああしろ、こうしろ」と言われたのでは、誰だって嫌になりますよね。ムッとして、「もう口なんかきいてやるもんか」と意地を張りたくもなるものです。

 お父さんに抱く反感は、自分には口うるさいくせに、外ではボランティア活動に精を出し、評判がよいこと。つまりお父さんが見せる「内と外」の落差にあるようですね。

 地域でボランティア活動に参加し、「立派」と評価されるお父さんは、やはりすてきだと思いますよ。

 お父さんがあなたに口うるさいのは、それだけあなたの今と将来を心配しているからだと思います。その気持ちがついつい「指示・命令」口調になりがちなのでしょう。

 あまり表面的な言動だけで見ないで、それらの背後に隠された、お父さんのあなたを思う心配な気持ちを見るようにしてはいかがでしょうか。

 また、思い切ってお父さんのボランティア活動をのぞいてみたり、一緒に参加してみてはどうでしょう。外での別のお父さんの姿から、今まで知らなかった良さを発見し、嫌悪感もうすれていくかもしれません。そうすれば、お父さんも娘に「受け入れられている」という安堵(あんど)感から、いつの間にか指示もなくなっていくように思います。

 あなたの心のスタンスを少し広げ、お父さんを受けとめてみてはいかがでしょう。


教育評論家 尾木 直樹さん

 法政大学キャリアデザイン学部教授。中高22年間の教員経験を生かし、調査研究、全国での講演活動等に取り組む。著書多数。



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