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2009年9月11日(金)「しんぶん赤旗」

霊感商法初公判

「統一協会の宗教活動」

東京地裁検察冒陳 目的は全財産献金


 統一協会(世界基督教統一神霊協会)の霊感商法を裁く初の刑事裁判が10日、東京地裁(秋葉康弘裁判長)で始まりました。検察側は冒頭陳述で、霊感商法は統一協会の宗教活動であり、最終目的は信者にし、全財産を献金させることだと指摘しました。


 起訴されているのは統一協会のダミー組織で印鑑販売の有限会社「新世」(東京都渋谷区)と同社長の田中尚樹(51)、取締役の古沢潤一郎(40)の両被告。

 起訴状によると、両被告の指示のもとで「新世」販売員が通行人を運命鑑定と称して事務所に連れ込み、「あなたの先祖は武家でたくさんの人を殺している。因縁が深く、夫の病死もそのせい」などと長時間説得。相手を困惑させ、「良い印鑑を持てば因縁を払うことができる」として高額な印鑑を売りつけていました。これが特定商取引法違反の罪に問われています。

 冒頭陳述によると、「新世」出資者3人と販売員約30人の全員が統一協会員で、統一協会南東京教区の「特別伝道部隊」として活動。印鑑購入者は判明分だけで331人、契約額2億3226万円。そのうち63人がフォーラムと称する講座に参加し、受講料282万6000円のほか4306万円を献金しています。

 検察側はこれを、統一協会の宗教活動だと指摘。印鑑販売は一連の洗脳の初期の段階であり、購入者を洗脳し、献金させ、新たな販売員を育てるシステムがつくられているとのべました。


再発防止へ解明を

 渡辺博弁護士(全国弁連東京事務局長)の話 動機や組織的背景などかなり踏み込んだ冒頭陳述で、それらの事実を認めるなら当然、宗教法人統一協会の責任が問われる。霊感商法の再発防止には動機の解明が不可欠であり、それが司法の任務だ。


被害は氷山の一角

 「それは本件事案と関係ないじゃないですか」。被告人の弁護士が突然、大声をあげました。10日、東京地裁で開かれた霊感商法の刑事裁判。検察側が次回公判で元信者らの証人調べを求め、立証趣旨を説明中のことでした。

 「信者個人の行為であり、当法人には関係ない」―。統一協会は霊感商法や違法伝道が問題になるたびにそう弁明してきました。事件の当事者はあっさり罪を認めて略式の罰金刑に応じたり、民事の賠償金支払いに応じることで、動機や背後関係の解明を封じるという戦略です。

 今回も同様。起訴の対象になった事件(2007年9月から09年2月の5件で被害者は30代から60代の女性)については被告人側は「間違いありません」と述べていました。

 ところが、その後の冒頭陳述で検察側が背後関係に踏み込む姿勢を表明。そのとたんに飛び出したのが弁護士の大声でした。

 検察側は、「万物復帰」や「日本は全財産を韓国に捧げなければならない」という統一協会の教義にも言及。「新世」社長の田中被告が「印鑑の販売員ではなく伝道者だ」と訓示していることや、印鑑購入者の住所、氏名を直ちに統一協会にファクスしているといった事実も明らかにしました。

 全国霊感商法対策弁護士連絡会のまとめでは1987年から08年の間に受けつけた被害相談は3万件、1060億円。これでも氷山の一角で実被害は1兆円を超すといわれます。司法がどこまで踏み込むことができるのか。裁判の行方が注目されます。(柿田睦夫)


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