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2009年9月3日(木)「しんぶん赤旗」

生活保護・母子加算復活へ好機

“最低生活できない”声切実

いま、国民運動大きく


 廃止された母子家庭の「命綱」、生活保護の母子加算の復活を―、今年4月に全廃された母子加算の復活を求める世論と運動が広がっています。(矢藤実)


 自民・公明政権に代わり新しく政権に就く民主党もマニフェストに、「生活保護の母子加算の復活」を掲げています。「一日も早い実現を」の声が日増しに高まっています。

 「収入のほとんどが、光熱費と食費で消えてしまいます。母子加算を元に戻してもらわないと、親子ともに人間としての最低生活すらできません」と涙ながらに話すのは、青森市に住む早川ゆり子さん(43)=仮名=。高校生の長女との二人暮らしで、数年前から病気になり働くことができません。

残るは5万円

 現在の生活保護費は月12万9040円。長女の学費4万3000円と家賃3万3000円を差し引くと、手元に残るのは5万円足らずです。

 月約2万円の母子加算が廃止され、食費を切り詰め、ご飯とふりかけだけで過ごす日が増えました。風呂に入るのも減らし、夏は水のシャワーで済ましています。おしゃれな洋服を長女に買ってあげたくても、ままなりません。

 「将来は介護福祉士になりたい」という長女。その願いをかなえるためにも「母子加算を復活してほしい」。ゆり子さんは、言葉を強めました。

 全国生活と健康を守る会連合会の辻清二事務局長は、「民主党は母子加算の復活を公約しているのだから、直ちに実施してほしい」と語ります。

 「聖域なき構造改革」を掲げ、「骨太の方針」で毎年2200億円の社会保障費を削減、福祉、医療の大幅切り下げを強行した自民・公明党政権。このもとで断行された生活保護の母子加算、老齢加算廃止。その結果、生活保護で生活する母子、高齢者世帯に生活苦が押し寄せました。

 全生連は「母子加算、老齢加算の廃止は、健康で文化的な最低限度の生活を保障しないもので憲法違反。元に戻せ」と、加算復活の運動の先頭にたってきました。

裁判に110人超

 「老齢加算・母子加算廃止」の無効を裁判で問う「生存権裁判」は9都道府県で110人を超える原告がたたかっています。今年の「母子加算廃止」に対する不服審査請求は19道府県で180人を数えます。

 母子加算を削減された当事者が繰り返し、国会内で集会を開き、深刻な実態を訴えました。その話に涙する議員もいました。

 作家の雨宮処凛さんらが呼びかけた「老齢加算、母子加算をもとに戻せ」のアピールは学者、文化人、国会議員ら270人が賛同。日弁連は6月に会長声明を発表しました。

 日本共産党は、志位和夫委員長が衆院予算委員会総括質疑で、「子どもの貧困を悪化させるな」と母子加算廃止の中止を求める(2007年)とともに、国会で何回も取り上げました。

 これらの世論と運動に支えられ、日本共産党、民主党、社民党、国民新党は6月、「母子加算復活」を求める改正案を国会に提出。参院では同法案が可決されたものの衆院では審議されず、廃案。自民、公明両党は、参院厚生労働委員会では審議も、採決も欠席、参院本会議では棄権、加算復活を妨害し続けました。

地方議会にも

 「加算復活」の声は地方議会にも広がっています。岩手県議会が「母子加算復活の意見書」を可決(7月)、京都・京田辺市では全会一致で可決しています。

 「加算復活を実現させるためには、今、さらに大きな国民運動に広げることが、大事だと思います」と辻さん。全生連は「生活保護の老齢加算、母子加算をもとに戻す」請願署名を広げるとともに、8日には民主党、日本共産党など各党への申し入れ、要請、厚労省との交渉を予定しています。


 生活保護の母子加算 子どもの養育には特別の需要があるとして生活保護法の通知で定めたもの。厚労省は、生活保護を受けていない一般母子家庭より、生活保護の母子家庭のほうが消費水準が高いとして、16〜18歳の子を持つ一人親世帯について05年度から母子加算を段階的に廃止、15歳以下も09年度に全廃しました。



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