2009年9月2日(水)「しんぶん赤旗」
中国農村
20年までに年金制度
今月から試験的導入 加入数%の現状打破へ
【北京=山田俊英】中国政府は9月から農村年金制度の試験的導入を始めます。全農民を対象にした初めての公的年金です。国の拠出で基礎年金を保障。2020年までに全国で実施する計画です。
![]() (写真)畑で作業する農民=6月、甘粛省定西市太平村(山田俊英撮影) |
年内に全国約2800の下級行政区(県、市など)の約1割で試行します。8月18日、試験運用について国務院(内閣)で会議を主宰した温家宝首相は「農業税の廃止、農村での無償義務教育の実施に次ぐ、重要な農村政策であり、都市・農村の二元構造を打破し、基本的公共サービスの平等を実現する重要なステップだ」と強調しました。
農村年金は基礎年金と個人年金の2階建て。基礎年金の財源については税収が多い東部各省で50%、中西部各省で100%を国家財政でまかない、給付水準の平等を保障します。個人年金は加入者が払う保険料と地方財政で運用します。生活困窮者の保険料は地方財政から支出します。
中国の農村にはこれまで一応、任意加入の年金制度がありましたが、各人が払う保険料を個人口座にプールし、運用益とともに還元する事実上の積立金でした。国家財政からの拠出はなく、一定の給付水準を保障する確定給付型でもありません。
このため農村部の年金加入率は各地方で数%から10%程度。50%程度しかない都市就業者の加入率よりさらに低い水準です。
中国では「一人っ子」政策のため高齢化が急速に進んでいます。全人口のうち65歳以上は2008年時点で1億1000万人、8・3%。20年には12%、40年には20%以上と予測されています。高齢者の6割が農村住民。農村年金の完備は時間との競争です。
出稼ぎ農民が1億数千万人にのぼり、農村人口の流動化が進んでいることからも全国的な年金制度の確立が急務とされています。


