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2009年8月23日(日)「しんぶん赤旗」

温暖化対策

国際水準は共産党

NGO“高速道無料化は逆行”


 いま国際的に大きな課題となっている地球温暖化問題。総選挙では、高速道路無料化の公約との整合性が議論を呼んでいます。

 気候ネットワークや「地球環境と大気汚染を考える全国市民会議」(CASA)など環境NGO(非政府組織)は5日、高速道路料金割引・無料化、自動車関連税の暫定税率廃止を選挙公約で掲げる各党に対し、「CO2(二酸化炭素)排出を増加させる地球温暖化対策とは逆行する環境悪化政策」だとし、撤回を求める共同声明を発表しました。

 共同声明に名を連ねたのは当初は10団体。その後、賛同の輪が広がり、19日現在で23団体になっています。

 マニフェスト(政権公約)で、民主党は高速無料化と暫定税率廃止、公明党は現行の高速割引の恒久化、社民党は暫定税率廃止を掲げています。自民党は与党として高速割引を導入しました。日本共産党だけが「高速道路無料化より福祉・教育を優先する」という政策を掲げています。

 声明は、共産党以外の党の公約を示して撤回を要求。暫定税率廃止も、環境税導入で温暖化に影響を及ぼさないようにすべきだと述べています。

 12日の自民・民主の党首討論で麻生太郎首相は、政府の高速料金値下げ策を棚に上げ、「石油消費が増え環境に悪い」と民主党の高速無料化政策を批判。民主党の鳩山由紀夫代表は「環境税も視野に入れたい」と述べたものの、具体策は示しませんでした。

 「朝日」18日付の世論調査でも、民主党の高速無料化公約を「評価しない」が67%。「評価する」の23%を大きく上回っています。

2度以内に抑制

 「産業化以前の水準からの世界全体の平均気温の上昇が摂氏2度を超えないようにすべきとの広範な科学的見解を認識する」―7月上旬にイタリア・ラクイラで開かれた主要8カ国首脳会議(G8サミット)は首脳宣言で、こう合意しました。

 「気温上昇を2度以内に抑える」は、世界の科学者を結集した「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)が、温暖化の悪影響を限定する必須条件として提示。これにG8サミットが合意したのは初めてでした。

 この項目は、オバマ米大統領の強い働きかけで入ったと言われます。同大統領は、「2度以内に抑える」目標は「科学界の主流が求めてきた」と強調しました(7月9日)。

 温暖化問題を人類的課題と位置づけ、国際的な議論と共通する政策を掲げているのは、日本共産党です。共産党は「2度以内の気温上昇にとどめることがカギ」だとし、2020年までに30%(中期目標)、50年までに80%(長期目標)の温室効果ガス削減目標を提起しています。

 そのため▽政府と産業界の間で削減目標を明記した公的削減協定を結ぶよう義務づける▽補助的手段として国内排出量取引制度や環境税を導入する▽電力固定価格買い取り義務制度を導入し、エネルギー全体に占める自然エネルギーの比率を20年までに20%にする―などを打ち出しています。

 この政策を聞いた環境NGOのメンバーからは、「民主党に期待していたが、温暖化対策は共産党だ」との声が寄せられています。

自公は財界中心

 サミットの水準にも達しないのが「財界中心」の自公政権です。“大企業が許容する範囲の対策しかとらない。できなければ、気温が3〜4度上昇しても仕方ない”が本音。90年比で約8%減というG8で最低級の中期目標を決めたのも、この姿勢からでした。

 総選挙結果との関連で、民主党の温暖化対策に関心が集まっています。同党は90年比25%減の中期目標を掲げています。これを実現する政策・措置として、「(排出上限を設定する)キャップ&トレード方式による実効ある国内排出取引市場を創設」「再生可能エネルギーによる発電量の全量を一定期間、一定価格で買い取る固定価格買取制度を導入」するとしています。

 自公政権は排出量取引の試行を始めるものの、排出上限がなく排出削減に結びつかない、極めて限定的な制度。固定価格買い取りも、太陽光発電の余剰電力だけが対象です。

 民主党の政策は、これらより前向きです。日本経団連や日本鉄鋼連盟などは、民主党の政策に「理解に苦しむ」と反発しています。

民主政策に疑問

 民主党の政策には、環境NGOなどから疑問も出ています。一つは中期・長期目標の低さです。再生可能エネルギー導入目標も、20年までに「10%程度の水準を目指す」という低さ。気候ネットワークは、20%への引き上げを求めています。

 環境税では、昨年版政策集や今年4月提出の法案では「地球温暖化対策税(を)創設」するとうたっていましたが、今回のマニフェストでは「導入を検討する」と変わりました。

 原発については、「着実に取り組みます」(政策集)と推進の立場です。

 「自公政権のもっとも悪い特質の一つである『財界主導』の政治と決別する意思があるのかどうか」(17日の党首討論での志位和夫・日本共産党委員長の鳩山代表への質問)が、ここでも問われています。

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