文字の大きさ : [] [] []

2009年7月27日(月)「しんぶん赤旗」

預け先が見つからない
署名や自治体に要望も

新制度より保育所増を

保育合研シンポ


 大阪府内で開かれている第41回全国保育団体合同研究集会は26日、2日目を迎え、シンポジウム、市民子育て講座、子育て交流会、分科会など56会場で、保護者、保育士、研究者たちが学び、交流しあいました。そのなかのシンポジウム「保育制度はどうあるべきか!? 新制度導入より保育所の増設を」では、認可保育所増設や待機児解消を願う親たちの運動などが報告されました。


写真

(写真)発言する(左から)入舩、猪熊、伊藤、大宮の各氏=26日、大阪・関西大学

 「保育所に預けるためにあちこち歩き回っても、認可外の保育所で90人待ち。どこにいっても断られ続けた、という女性が身近にもいました」とパネリストの猪熊弘子さん(ジャーナリスト)は報告しました。自身も4人の子育て中で、保育所に入るのに苦労してきました。「新制度にもられている直接契約制度になったら、預け先を探すのは親になり、みんなが同じ苦労を味わうことになる」と、先行事例となっている東京都の認証保育所制度を紹介しました。会場からも、「毎年6月にある保育まつりで相談コーナーを設けたら、預けられずに困っていると切々と訴える相談が相次いだ」と埼玉・所沢市の保育士が発言しました。

 パネリストで東京・新宿区の認可外保育所園長の入舩益夫さんは、預け先がなくて困ったお母さんたちとじっくり話を聞いてきた経験を報告。「月15万円のベビーホテルに仕方なく預けている」「預け先が見つからないのは私のせいみたいで、つらい」と涙ながらに訴えられたことを紹介しました。

 そんなお母さんたちと「保育園に入りたい!待機児童をなくそう会」を立ち上げ、署名活動にとりくんだり、陳情書を提出したり、副区長と懇談したりしてきました。「お母さんたちは、認可保育所の増設と、すべての子どもに平等な保育実現を、という願いです。制度をいじるよりも、緊急に待機児をなくすこと」と訴えました。

 「いま、政府がすすめている新保育制度は、破たんしている介護保険制度、障害者自立支援法をモデルにした、直接契約・直接補助方式を基本としている」とパネリストの伊藤周平さん(鹿児島大学教授)は指摘。「この仕組みはお金がなければ、必要な保育を受けられない子どもを増やす」「保育は企業参入でビジネスになり、撤退したときどうなるのか、待機児童も把握できなくなる」などと、市町村の実施義務がなくなる問題をあげました。

非市場化が欧米の流れ

 コーディネーターの大宮勇雄さん(全国保育団体連絡会会長)は、「今、欧米では、保育を市場にゆだねてはいけない、が大きな流れになっています。たとえば、イギリスでも保育料は無償に、すべての希望者が保育園に入れるようにしよう、保育士の待遇改善で保育の質もあげよう、家庭にも子育て手当を出そうとなってきている。どの子にも平等に質のよい保育を与えられる社会は、社会全体の富も高めることができるという哲学が政治の中に生まれています」と紹介しました。

 「困難をかかえ、手のかかる子どもこそしっかりと引き受け、子どもの可能性を引き出せる保育を保障する制度を、みんなの力でつくっていきましょう」としめくくりました。


世の中変えなきゃ 元気もらいました

 大阪府吹田市から参加した藤田南弥さん(42) 「1歳の子と無理心中してしまったお母さんも、もし預かってくれる保育所があれば、命を救えたかもしれない」という報告を聞いて、本当に胸がつまりました。

 いまの保育制度改悪は、「保育分野をビジネスに開放せよ」「安上がりに使う労働者の子どもを短時間安上がりに預かるような保育制度でいい」という財界の意向をくんで進められていると知りました。そんな財界の意向をくんで政治を進めてきた政府は、子どものこと、社会のことなど、何も真剣に考えていないと、あらためて怒りがわいてきました。

 仕事と子育てに疲れて元気を失うことも多いのですが、合研に参加して、事実を知ること学ぶことで世の中変えていかなきゃと元気をもらいました。

 政権の枠組みだけが変わっても、私たちの声や運動が届かなければ、保育制度改悪も阻止できないという発言がありましたが本当にそのとおりです。今日学んだことを多くの人たちに語っていきたいと思っています。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp