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2009年7月19日(日)「しんぶん赤旗」

防衛白書 世界の変化見えず

田母神問題 反省なし


 17日に公表された2009年度版防衛白書は、8月末の総選挙での自公政権退場の可能性もあるもと、同政権下で最後の防衛白書となるかもしれません。

 しかし、その中身は、「核兵器のない世界」を国の目標に掲げるオバマ米政権登場の意味も深く吟味せず、“世界の変化が見えない”白書となっています。

無批判に紹介

 イラクで無法な戦争を引き起こし、泥沼化させたブッシュ前政権の対外戦略は、オバマ政権のもとで大きな見直しが進められています。

 ところが白書では、「米国の相対的な優位性は軍事面を含め低下するとの指摘があるが…引き続き最も影響力を有する国家であることに変化はないものと考えられる」とし、ブッシュ前政権の対外戦略を無批判に紹介しています。

 オバマ大統領のプラハ演説についても、「核兵器のない世界を目標にする」ものの、「一方で米国が単独で核軍縮をすることはないとしている」と述べ、米国主導の核軍縮を望まないかのような表現になっています。他方で白書は、中国や北朝鮮の軍事的脅威を強調しています。

 前回の白書発表以降、国内では、田母神俊雄航空幕僚長(その後更迭、定年退職)が、過去の日本の侵略戦争を「濡れ衣(ぬれぎぬ)だった」とする、政府見解に反する「論文」を発表する事件が起こりました。

 白書は、この問題について、高級幹部が「自らの社会的地位を踏まえた適切な言動を行う責任があることを十分に自覚すること」「部外に対して意見を発表する場合に必要な通報を行っていなかった」としていますが、田母神氏のような考え方が防衛省・自衛隊にまん延しているという根本問題は反省していません。

自衛隊を自賛

 浜田靖一防衛相は、白書の前書きで、「ますます活動のフィールドが広がる中で、自衛隊は進化し続けています」と自賛し、「海賊対処」の名目による自衛隊の海外派兵活動などをあげ、引き続き海外派兵恒久法制定の必要性を強調しています。

 世界の情勢の変化をふまえず、組織の重大な欠陥を点検もせずに、自衛隊が海外派兵の「フィールド」を広げ、「進化し続ける」とする危険な姿勢には、要注意です。 (洞口昇幸)



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