2009年7月16日(木)「しんぶん赤旗」
米下院民主
医療保険改革案を発表
対象97%めざす 富裕層に課税し財源
【ワシントン=小林俊哉】米下院民主党は14日、医療保険制度改革法案を発表しました。政府が管掌する公的医療保険を導入し、2019年までに国民の97%まで保険対象を拡大することを目指します。財源として富裕層への課税を盛り込んだのが注目されます。
同案は、共働きで年収35万ドル(約3300万円)を超える世帯に1%、50万ドルを超える世帯には1・5%の増税を規定しています。年収100万ドル以上の富裕層へは5・4%の増税を盛り込みました。ロイター通信は、これにより、富裕層への税率は45%まで上がるとする議会事務局の見通しを伝えています。
推定4500万人に上る無保険者に保険を適用するなどの包括的医療保険改革には、1兆ドル(約93兆円)の財源が必要とされますが、今回の増税策では10年間で5440億ドルを見込み、保険適用拡大の一助とします。
米国は日本とは異なり、国民皆保険制度が確立されていません。無保険者への保険適用拡大など医療保険制度改革は、オバマ政権が内政上の最重要課題として強力に推進しています。しかし、野党・共和党からは、公的保険制度の導入は民間保険会社の脅威となるとして、強い反対論があります。
下院民主党は8月の議会休会前に同法案を通過させたいとしていますが、与党・民主党内にも公的医療保険制度には異論があり、仮に下院で法案が通過したとしても、上院での議論の行方は不透明です。
オバマ大統領は同日、声明を発表し、「今回の提案は、医療費の高騰を制御し、無駄を省き、医療の質を高めるものだ」と強調しました。

