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2009年7月3日(金)「しんぶん赤旗」

自民 民主 危険な競い合い

ご存じですか 民主・鳩山代表『新憲法試案』の中身

9条2項「最も欺瞞的」と攻撃

海外での武力行使も容認


 自民党と民主党の危険な共通部分の一つが、改憲志向です。新しく民主党の代表になった鳩山由紀夫氏は、どのような憲法観の持ち主なのか。鳩山氏が2005年に発表した『新憲法試案』に、その考え方をみてみました。


 鳩山氏の「試案」の第一の特徴は、憲法の平和原則、なかでも「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」とした9条2項を否定していることにあります。同項を「最も欺瞞(ぎまん)的」と攻撃し、「自衛軍保持」を明記しました。

 現行憲法の最も欺瞞的な部分をなくし、誰が読んでも同じ理解ができるものにすることが重要なのだ。

 「第五〇条(自衛軍) 日本国は、自らの独立と安全を確保するため、自衛軍を保持する」

 鳩山氏はそのうえで、海外での武力行使を可能にする集団的自衛権の行使を容認すると明記。自民党政府でさえ、憲法上禁じられているとしてきた原則の大転換です。また、武力行使をともなう国連の軍事活動への参加を明確にし、政府の「海賊対処」派兵新法案に先立って“海賊取り締まり”も可能だとしています。

 今の法制局解釈のように、いたずらに集団的自衛権のハードルを高く設定していることが、われわれの外交政策における選択肢を狭め、国益を損なうことになっていはしないか。この憲法試案は、このような観点から、集団的自衛権の制限的な行使を容認するという立場に立つ。

 国連決議による多国籍軍や平和執行部隊、あるいは将来編成されるかもしれない国連常設軍への参加…私の憲法試案では、こうした国連による国際警察軍的な活動への参加を明確に容認している。

「明治憲法を引き継ぐ」と

 鳩山氏の「試案」のもう一つの特徴は、憲法前文を非難し、天皇主権の明治憲法を引き継ぐとしていることです。安倍晋三元首相は、憲法前文に対し、「敗戦国としての詫(わ)び証文」「妙にへりくだった、いじましい文言」などと悪罵(あくば)を投げつけましたが、鳩山氏も前文のまったく同じ個所に非難をぶつけています。

 (中東の)現状を見ただけでも、とても「平和を愛する諸国民」とは言い難い状況であるし、まして、その公正さを信じて日本の生存を保持しようなどと、情けないことを言うべきでない。

 頭を撫(な)でられ、ほめられて喜ぶ日本を目指すのではなく、国としての尊厳を確立することによって、国際社会をリードする気概を持たねばならない。

 そのうえで、「試案」は、「現行憲法の前文にとらわれることなく、新憲法の歴史的位置づけと、新たな国家目標について記すこととした」とし、真っ先に明治憲法を引き継ぐことを宣言。天皇の「元首」化も明記しています。

 「この憲法は、明治二十二年憲法によって創始された議会主義と政党政治の伝統を受け継ぎ…」

 「第一条2 日本国は、国民統合の象徴である天皇を元首とする…」

小選挙区制に執念を燃やす

 鳩山氏は、著書の冒頭から「祖父鳩山一郎」が「小選挙区制に変えようと試みた」のは「憲法を変えるために…極めて安定した与党を作らなければならなかったからである」とのべ、「私には祖父のDNAが存している」としています。「試案」も、改憲のために小選挙区制を導入すること、それによって二大政党制による統治システムをつくることを目的としています。

 試案の「政党は、国会議員の総選挙に際しては、内閣総理大臣候補としての党首及びその施政の基本方針を明示して臨まなければならない」という条文は、総選挙を国民の手による政権選択の場とするための条文である。

 衆議院において不完全ではあるが、小選挙区制を敷き、自民党に代わり得る責任政党づくりに努め、今一歩でその目的に到達するところに来ている。これはもう後戻りできない、してはならない道だ。

小泉「改革」も「中途半端」

 鳩山氏の「試案」は、小泉「構造改革」も中途半端だとし、それを徹底することを求めています。そのための国家改造の柱が中央の「小さな政府」と自治体統合。中央政府は外交や安全保障に役割を絞り、福祉や教育は地方に丸投げする構想です。

 小泉首相の「構造改革」は常に表面的なものに留(とど)まり、本丸を改革するには至っていない。…私は本丸に届くような国の制度の根本的な改革を行うには、国の新しい仕組みを憲法に明確に記述するしかないと考えている。

 小さな中央政府を実現することは…国がその本来の役割である外交、防衛、マクロ経済政策の分野において、より迅速で戦略的な意思決定を行う体制を整えるためにも避けて通れない。

「友愛革命」は改憲のこと

 鳩山氏が好きな言葉は「友愛」。それに必要なのが憲法改定なのだと主張しています。そして、民主党の「創憲」論は、「『改憲』よりも『改憲』的だ」と自慢さえしています。

 「自立と共生を両輪とした民主主義政治の確立を目指した友愛革命」…そのような理念の下で、国家を構想していくと、どうしても憲法改正が必要になる…。

 それまでの民主党は「護憲」派にも気を遣いながら、大いに憲法を議論しようという意味で「論憲」との立場をとっていたが、それでは何を言っているのかわからない。…「創憲」は新しい憲法を創(つく)ることを意味するから、実は「改憲」よりも「改憲」的なのである。その立場に漸(ようや)く民主党が立つことができるようになった…。



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