2009年6月30日(火)「しんぶん赤旗」
軍、大統領を国外追放
セラヤ大統領 「違法なクーデター」
ホンジュラス
中米ホンジュラスの軍部隊は28日、同国のセラヤ大統領を拘束、軍用機でコスタリカへ連行して国外追放しました。同大統領は「違法なクーデターだ」「自分が民主的に選ばれた大統領だ」と語り、解任を拒否しています。(島田峰隆)
議長を暫定大統領に
同大統領は28日夜には、ベネズエラのチャベス大統領が手配した飛行機でコスタリカからニカラグアへ向かいました。同国で中南米の左派政権との首脳会談に臨む予定です。
軍の意向を受けた国会議員らは28日、セラヤ大統領を解任し、代わりにミチェレッティ議長を暫定大統領に指名することを提案し、国会は全会一致で承認しました。議会ではセラヤ大統領が署名したとされる辞表が読み上げられましたが、同大統領は「辞表は全くの偽物」と否定しています。
一方、最高裁は28日、「法の支配の堅持」を口実に、セラヤ大統領の拘束と国外追放を軍に命じたことを明らかにしました。
現地からの報道によると、軍はロダス外相ら大統領側近に加え、ベネズエラ大使など中南米の左派政権の外交官の拘束も始めたといいます。
首都テグシガルパ中心部では、大統領支持者がバリケードで道路を封鎖するなどして軍と対立。ロイター通信は、大統領府近くで発砲音が聞こえたと伝えました。ミチェレッティ氏は、28日から2日間の夜間外出禁止令を発令しました。
セラヤ大統領は、憲法改正のための制憲議会設置の是非を問う国民投票を28日に実施しようとしていました。改正には現在1期限りとされる大統領の再選制限の廃止が含まれます。
しかし最高裁は、国民投票は法的根拠がないと判断。軍隊も国民投票には反対していました。
最高裁や軍との対立が深まる中、セラヤ大統領は24日、軍がクーデターを計画しているとして、軍トップのバスケス将軍を解任。これに対し最高裁は将軍解任の取り消しを大統領に命じていました。
ホンジュラス 16世紀からのスペイン支配を経て、1821年に独立。軍政後、1981年に民政移管の大統領選挙が行われました。人口は710万人余り、面積は約11万平方キロ。セラヤ大統領は2006年1月に就任。中南米の左派政権でつくる米州ボリバル代替構想(ALBA)に加盟するなど、新自由主義と対米従属からの転換を図っています。
国際社会 強く非難
中米ホンジュラスのセラヤ大統領を軍が追放したことに対し、民主主義を破壊する行為だとして国際社会から強い非難の声が出ています。
南北米州35カ国で構成する米州機構(OAS)の常設理事会は28日、緊急会合を開催。「ホンジュラスでのクーデターを非難し、セラヤ大統領と民主主義の継続性を支持する」決議をあげました。
デスコト国連総会議長(ニカラグア)は、「憲法に基づく秩序を壊す犯罪行為」だと批判しました。「唯一の解決策は、主権を持つ国民が選挙を通じて獲得したセラヤ大統領を直ちに復帰させることだ」と述べました。
欧州連合(EU)議長国のチェコは、軍の行為を「厳しく非難」し、セラヤ大統領の「即時解放」を求める立場を表明しました。
ブラジル外務省は、「セラヤ大統領を追放した軍事行動を厳しく批判する」「この種の軍事行動は民主主義に対するテロ行為だ」とする声明を発表しました。
アルゼンチンのフェルナンデス大統領は、「中南米地域で最悪の野蛮行為へわれわれを後戻りさせる行為だ」と語りました。
南米諸国連合(UNASUR)議長国チリの外務省は声明で、「民主主義の回復と国民によって合法的に選ばれた大統領の即時復帰」を求めました。
メキシコ外務省は、「懸念」と「非難」を表明するとともに、ホンジュラス国内に滞在する各国外交団の保護を求めました。
米大統領、遺憾の意
【ワシントン=西村央】中米ホンジュラスのセラヤ大統領がクーデターで国外に追放されたことについて、オバマ米大統領は28日、遺憾の意を表明し、「ホンジュラスの政治家や社会勢力に対し、法の支配と米州民主主義憲章の尊重を要求する」と強調しました。
米メディアによるとオバマ氏は、「いかなる緊張や争いも、外部からの干渉ではなく、平和的な対話を通じて解決すべきである」と語りました。

