2009年6月22日(月)「しんぶん赤旗」

NHK「日曜討論」

市田書記局長の発言


 日本共産党の市田忠義書記局長は21日のNHK番組「日曜討論」に出演し、政府が決定した地球温暖化対策の「中期目標」などについて各党代表と討論しました。出席者は市田氏のほか、自民党・野田毅地球温暖化対策推進本部委員長、民主党・岡田克也幹事長、公明党・山口那津男政調会長、社民党・福島瑞穂党首、国民新党・亀井久興幹事長。司会は影山日出夫解説委員です。


麻生政権は末期状況

 冒頭、支持率が急落した麻生政権の現状をどうみるかが議論となりました。市田氏は次のように述べました。

 市田 一言で言うと政権末期の状況です。統治能力、政権担当能力を喪失した状況じゃないか。それは支持率にも表れています。

 ある世論調査によると「今の政治に不満だ」という人は91%で、どういう点で不満かというと「将来像が示されていない」という人がまた91%くらいある。(麻生自公政権は)当面の選挙目当てのばらまきはあるけれど、今後の日本経済を景気悪化からどう立て直していくか、外交を自主・自立の外交にどう転換していくかという旗印は全然みえない。

 片や(民主党は)「政権交代」とおっしゃるけれど、政権交代して日本経済、外交をどうするのかという中身が問われている。

 環境対策をやる場合も、当面のことと将来像を示せる内閣でなければだめだ。

 2020年までの日本の温室効果ガス排出量削減の中期目標を05年比で15%にするとした政府の「中期目標」について自民党の野田氏は、15%は真水(国内での直接的な削減努力)による目標であり、外国の排出枠の買い取りなどを「追加すれば20%を超える数字になる」などと説明。市田氏は次のように答えました。

 市田 (15%は)経済界が容認するぎりぎりの数字です。世界の科学者の知見を結集したIPCC(気候変動に関する政府間パネル)報告は先進国は少なくとも中期目標は25%〜40%と(しています)。それからみて全然その要請にこたえた科学的、野心的なものになっていない。

 しかも、90年比でみますとわずか8%で、(京都議定書の)第一約束期間の6%に2ポイント上積みするだけの話です。この間(排出量を)増やし続けてきたために、数字を大きくみせる。そういうごまかしをやめて、真剣に排出量を削減するという立場に立つべきです。

 もともと今度の政府の案をみると日本経団連副会長をやっておられる新日鉄会長が責任者の総合資源エネルギー調査会の長期エネルギー需給見通しがもとになっているわけです。それの最大導入が(05年比)14%だったのですよ。それに太陽光を10倍から20倍にすることで1%増やして15%。

 先ほど真水だからとおっしゃいましたが、これは長期需給エネルギーの見通しに基づいてやっているわけですから、森林吸収とか京都メカニズムが入っていないのは当然の話です。今後の中期目標でも原発を9基増やして80%の稼働率という机上の計算であって、うまくいかなかったら当然森林吸収やそういうところに傾斜するわけで、真水論は成り立たないと思いますね。

 公明党の山口氏は「中期目標は国際交渉に臨む第一歩だからもっと努力する余地はある」と認めました。

温室効果ガスの一番の排出元は産業界

 政府の温暖化対策での「国民負担」について野田氏は「家庭での跳ね返りはできるだけ小さくしようとしている」などと発言。民主党の岡田氏は、政府が25%削減なら国民1人あたり36万円負担になるなどと述べていることは「脅しに近い話だ」と批判しました。市田氏は、次のように語りました。

 市田 あまり削減率を高くすると国民の負担も増えますよと麻生総理はいいました。可処分所得が4万減る、光熱費が3万増えると。これは長期エネルギー需給見通しに基づく試算ですよ。25%削減しても、(独立行政法人の)国立環境研究所がやった調査ではむしろ可処分所得が逆に増えていくし、光熱費はそう変わらないという試算が出ているわけですよね。だから自然エネルギーに傾斜して化石エネルギーに頼らないという方向に経済の構造を変えていくことが大事で、ドイツは自然エネルギー、この分野で3・7兆円もこの間売り上げを増やしていますし、雇用も28万人増えているわけですよね。だからそういう環境にやさしい経済に切り換えていくことによってかえって経済の発展にもつながる。大企業もきちんと負担する。国民も環境に役立つなら負担したいとみんな思っていると思うのですよ。

 しかし一番の排出量、大量に出しているのは産業界で、総排出量の8割を占めています。今度の案を見ますと総排出量の一番多い産業界の負担、その削減なんてことはほとんど求めていない。そういう不公平感を国民の多くが持っているのではないかと私は思います。

 CO2削減に伴うコストを誰が負担するのかで政府案が産業部門は10%削減、家庭部門は25%削減が必要だとしているのに対し、影山氏は「これは産業部門に少し甘すぎないか」と質問。野田氏は「電力を使うのは最終的には家庭部門、業務部門だ。最終的にエネルギーを使うところの努力がなければ電力会社にばかりに負荷をかけてもうまくいかない」と発言。山口氏も「産業界にはそれなりの言い分はあるだろう」と理解を示しました。市田氏は次のように反論しました。

 市田 全体の総排出量を調べて見ましたら、排出量13億7400万トンなのですね。そのうち88の発電所で、30・1%ですよ。鉄鋼セメントの78の巨大工場で2割です。その他大口の1500事業所で、2割と圧倒的な部分を占めるわけですね。

 京都議定書でマイナス6%約束しましたが、この間、90年比で9%逆に増えていますよね。そうなった最大の要因は、経団連の自主行動計画まかせ。やっぱり、自主行動計画にまかせていたら、利益追求が目的なんですから、積極的に減らそうとはしない。政府と産業界との、公的な協定ですね。ヨーロッパでは、ほとんどそういうことをやっているわけですから、そういう一定の規制が不可欠です。利潤追求のためには、“後は野となれ山となれ”ではだめです。一刻の猶予も許さない、このまま放置すれば、取り返しのつかないような人類の生存にかかわるような重大事態であるわけですから、そこ(産業界)が一定削減したからといって、経済ががたがたになる、とはオーバーな言い方です。

 昨日、環境大臣も、可処分所得がものすごく減り、光熱費が増える、というのは、過大ないいかたで事実は違いますよ、とおっしゃったわけで、麻生さんの言い分を否定せざるを得なかった。

自然エネルギー普及を

 影山氏は、05年比15%削減は、企業の負担増で雇用に影響が出て、家庭の可処分所得が4万3千円減り、水光熱費支出が3万3千円増えるとする政府試算を示し、「家庭の理解はえられるか」と質問。野田氏は「この数字は誤解を招くのであまり使わない方がいい。15%削減でもいまに比べれば可処分所得もGDP(国内総生産)も伸びる」と試算の問題を認めました。市田氏は次のように述べました。

 市田 たとえば家庭の太陽光発電の固定価格買い取り制度。余剰電力だけでなく、総量買い取り制度にして、風力にも当然拡大すべきだ。その分、電気料金への上乗せということは一定はあり得るでしょう。ただ、電気・ハウスメーカーの太陽光発電パネルやシステムにかかるコストまで、電気料金に上乗せするやり方はまずい。

 原発のための電源開発税というのは、毎年3千数百億円あるわけです。これで負担すべきです。共産党は原発はOKできません。どういう理由かというと、安全性が確立されていないということです。この間、事故とか災害が相次いだ。活断層の上に原発があったということも明らかになっているわけですし、もし大きな事故でもおこれば環境どころか、壊滅的な打撃を受けるわけですから重大です。そういうところに頼らずに、自然エネルギーのほうにもっと傾斜していくことが非常に大事だと思います。

国民の努力実らせる社会経済システムへの転換を

 温暖化対策の今後について、「経済対策、雇用創出にもつながるために何をすべきか」と問われた市田氏は、次のように述べました。

 市田 一人ひとりの国民がいま大変、努力をしていると思うのですよ。たとえばレジ袋をやめて、マイバッグにするだとか、冷暖房をなるべく控えめにしようだとか、シャワー、照明を節約しようだとか。そういう一人ひとりの国民の努力を実らせて、生かすためにも、いまの社会経済システム、大量生産、大量消費、大量廃棄っていう、利潤のためだったら“後は野となれ山となれ”という社会経済システムを改めて、もっと自然エネルギーに傾斜していくと(いうことが重要です)。

 日本は、原発依存ですから、事故がおこってそれが稼働しないと、ということで安い石炭をずっと買ってきた。アメリカでさえも、この間、石炭依存は、90年比でたしか63%に減らしていますよ。イギリスでもドイツでも6割から7割ぐらい減らしています。日本だけが十数%ぐらいしか減らしていない。いまだに石炭依存が82%です。そういう産業構造のあり方、化石燃料に頼る経済体制を変えていくことが非常に大事です。自然エネルギーにもっと力を入れるべきです。



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