2009年6月20日(土)「しんぶん赤旗」
ILOは役割強化を
各国首脳、相次ぎ主張
雇用危機サミット
国際労働機関(ILO)主催の「世界雇用危機サミット」が17日までの3日間、ジュネーブで開催されました。参加した各国首脳から金融や労働問題での規制強化を求める声が相次ぎました。(片岡正明)
サミットは、世界的な金融・経済危機で最大5900万人の職が失われ、世界の失業者が2億3900万人に達するとのILO試算が発表される中で、雇用危機打開をはかろうと開かれたものです。サルコジ仏大統領ら9カ国の国家政府首脳のほか、各国の労相や労使団体のリーダーが参加しました。
サルコジ大統領は「グローバル化を規制することが中心問題だ」と述べ、金融危機に対する現在の世界の対応を批判、世界的な規制強化へのILOの役割の強化を主張。「ILOは、世界貿易機関(WTO)、国際通貨基金(IMF)、世界銀行と同等の発言権をもつべきだ」と強調しました。また、ILOの労働基準の各国への強制力を強める「革命」が必要だと述べました。
同大統領はまた、「投機と投げ売りの仕組み、短期的な収益への固執が世界を金融・経済危機に追いやり、社会条件を破壊した」と批判しました。
ブラジルのルラ大統領は、経済危機は人類史上前例のない金融投機の波によって引き起こされたと指摘。投機を許す金融制度や、タックスヘイブン(租税回避地)に対し、「断固たる態度で臨まなければならないことが、この危機でわかった」と述べました。
アルゼンチンのフェルナンデス大統領は経済危機の原因が、国家不在の新自由主義経済にあったとして、経済面での規制や監督に国家がより強い役割を担う必要性を強調。欧米諸国が主張する「労働の柔軟化」には失業者を増やすだけだとして反対の態度を表明しました。
ILOのソマビア事務局長は、各国政府や労使が雇用と社会的保護を経済社会政策の中心に据えることを目的とする「雇用に関する世界協定」を改めて呼びかけました。同協定は、政労使の社会対話やディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)などの実現に向けた諸政策からなるもの。ILOは、この政策を、国際法上の義務としてではなく、国内と国際的な場での共通の政策アプローチ、政労使の約束として進めていこうと提唱しています。

