2009年6月19日(金)「しんぶん赤旗」

イラン 両派の対立深まる

改革派 失政批判を強める
政府 「革命の成果」強調


 【カイロ=松本眞志】イランで12日に行われた大統領選挙で、保守派で現職のアハマディネジャド大統領が圧勝と発表された結果をめぐり、改革派支持者と保守派・大統領支持者との対立が深まっています。選挙で不正があったとの糾弾から始まった抗議行動は、1979年の「イスラム革命」以来、最大規模になりました。革命防衛隊や支持者を動員した政府側との対立で、同国は重大な岐路に立っています。

勝利への疑惑

 直接のきっかけとなったのは、現職大統領の「地すべり的勝利」への疑惑でした。“主要都市では対立候補で改革派のムサビ氏が優位”とも伝えられた事前の予測とはあまりにも異なる結果に、改革派は大統領の「不正」の疑いを強め、選挙結果の無効と再選挙を訴えています。

 抗議行動が空前の規模に広がった背景には、アハマディネジャド大統領の4年間の失政への根強い不満があると指摘されています。選挙前、国内では経済問題の深刻化が取り上げられてきました。

 政府批判派は、石油価格の高騰で莫大(ばくだい)な石油収入が流れ込んだのに、これらの資金は国内産業の振興や雇用対策に使われず、地方の貧困層だけを対象とした公共事業やばらまき的な金銭支給に使用されたと批判を強めていました。

 こうした政策は政府の年率20%以上のインフレ、10%以上の失業率の要因ともなり、現政権の政策の恩恵を受けた貧困層と、そうでない都市中間層などとの対立を広げました。

 外交でも核開発や中東問題をめぐって国際的孤立を深めたと批判の声があがりました。

 これに対しアハマディネジャド大統領や政府支持派は、経済困難はラフサンジャニ前政権時代の失政に原因があると反論。現政権は貧富の差のない「公正な社会」というイスラム教の理念に立って、貧困対策などで成果をあげてきたと強調しています。

 政府側は、外交でも米国など西側世界の圧力に屈せず、イランの主権を貫き、アフガニスタンやパキスタン、アラブ諸国など周辺国との協調をすすめてきたとイスラム革命の成果を強調しています。

 こうした政府と保守派の主張は、イスラム法による統治の枠内で民主主義を拡大し、国際社会により開かれた姿勢を取ろうとする改革派勢力との矛盾を深めています。

 抗議デモが拡大し、政権が革命防衛隊や民兵組織バシジを使った強権的な統治を強めるなか、「聖職者統治のもとでの民主主義」のあり方が重要な焦点として浮かび上がってきています。

憲法順守せよ

 改革派とこれを支持する国民は、大統領陣営に対し「被抑圧者の救済」「正義の確立」「圧制からの解放」を掲げた1979年のイスラム革命の原点に戻り、憲法を順守するよう訴えています。これらの主張は、現職大統領の再選を無条件に認めた最高指導者ハメネイ師にも向けられつつあります。

 保守派の護憲評議会は、改革派からの投票無効の要求を退けたものの、票の再集計については同意し、18日には大統領選をたたかった候補者と20日に選挙結果について協議すると表明しました。


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