2009年5月20日(水)「しんぶん赤旗」

すべての鑑賞教室に公的助成をもとめる

―井上参院議員が質問主意書


 日本共産党の井上哲士参院議員が四月十五日、学校芸術鑑賞教室に関する質問主意書を提出しました。鑑賞教室に関する井上議員の質問主意書は、二〇〇七年五月に続くもの。今回、井上議員は、文化庁が昨年公表した鑑賞教室の「調査報告書」をふまえ、公的助成の拡充を求める立場から質問しました。

都道府県で大きな格差

 井上議員は、まず五年前に比べて鑑賞教室が減少していることへの政府の認識をただしました。そのうえで、文化庁のすすめている事業(本物の舞台芸術体験事業)が鑑賞教室に占める割合などの実態を確認しました。

 そして、「調査報告書」でも「鑑賞教室の阻害要因は、予算と時間にあることが明らかになった」と指摘していることから、井上議員は、鑑賞教室が減少している最大の理由が予算上の制約であることへの政府の考えを尋ねました。さらに、その背景に鑑賞教室の経費の大半が児童生徒の負担となっていることがあるとして、政府の見解をただしました。

 井上議員は、全国の鑑賞教室の大半を占める自主的な鑑賞教室における児童生徒の負担を軽減する必要性を指摘。「鑑賞教室にかかる公演料その他の経費にたいして、国として三分の一助成を創設するなど、すべての鑑賞教室を対象とした公的助成の実施をめざすべき」だと提案しました。

 さらに、井上議員は、鑑賞教室の実施は都道府県で大きな格差があることを指摘し、国としての積極的な手だてをもとめました。

 政府からは四月二十四日に答弁書が送付されましたが、井上議員が指摘した鑑賞教室の現状やその打開を求める関係者の要望にはこたえませんでした。

困難な問題口をつぐむ

 答弁書は、「調査報告書」が鑑賞教室は「ほぼ同程度の実施率を保っている」とのべた部分だけを引用しています。しかし、「調査報告書」では五年前と比べて1・4%のマイナスとなっており、「調査のまとめ」では「実施は減少傾向にある」と指摘しています。十年前の調査と比較すると7・4%のマイナスで、減少が続いていることは明らかです。答弁書は、文化庁の事業の「拡充」をいうものの、それが鑑賞教室全体に占める割合すら「把握していない」ことも露呈しています。

 鑑賞教室の最大の阻害要因である「予算がない」という問題や、児童生徒の負担で鑑賞教室が支えられている現状については、答弁書は口をつぐんでいます。

 今日、子どもの貧困が社会問題になっており、児童生徒の負担を現状のままにして、鑑賞教室を続けることはいっそう困難となっています。鑑賞教室の充実のためには、すべての鑑賞教室に公的助成を行うことは急務です。その実施を政府に迫る世論と運動の強化が重要になっています。

(辻 慎一 党学術・文化委員会事務局次長)


 質問主意書と答弁書は、参議院のウェブサイトから検索できます。(http://www.sangiin.go.jp/japanese/frameset/fset_c03_01.htm



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