2009年5月20日(水)「しんぶん赤旗」

社保庁からの採用者決定

年金機構設立委 予定枠を下回る


 社会保険庁を解体・民営化して来年一月発足する日本年金機構の設立委員会(委員長・奥田碩トヨタ自動車相談役)は十九日の会合で、社会保険庁からの採用者を決めました。

 社会保険庁が提出した採用候補者名簿に登載されたのは一万一千百十八人で、民間からの採用枠を除く定員枠一万一千二百八十人を下回りました。

 正規職員として採用するのは九千六百十三人で、これも予定枠九千八百八十人に及んでおらず、準職員(有期雇用)も三百五十八人と千四百人の採用枠を大きく下回っています。

 にもかかわらず、二十八人が不採用とされ、正規職員を希望したのに準職員とされたのも三十四人にのぼっています。このほか採否保留とされている人が千百十九人も残されており、採用差別を受ける人がさらに増える危険性があります。

 労働ルールを無視して、懲戒処分を受けた職員は一律不採用とされたため、約八百五十人が候補者名簿から除外されるなど、選別採用の仕組みがつくられています。厳重注意など懲戒より軽い処分を受けた職員も慎重に判断するとされましたが、今回は二千百十六人が採用されました。


解説

日本年金機構

安心の年金壊す選別採用

 発表された日本年金機構の採用者名簿は、公的年金の安心・安定した運営や年金記録の早期整備に逆行するとともに、法的にも許されない選別採用を行おうとするものです。

 年金機構は、現行より三千人も少ない人員体制のもとで民間から千人も採用する計画です。その上、社保庁からは過去に懲戒処分を受けたものは採用しないなど国鉄分割民営化をまねた選別採用の枠組みがつくられました。

 安心できる年金業務や年金記録問題の解決には専門性ある職員は不可欠であり、千人規模で欠員が生じているもとでは全員の雇用継承こそ必要です。

 「労働法制・国家公務員法上重大な疑義がある」(日本弁護士連合会)と批判の声があがったのは当然です。

 しかも、今回の発表では、採用希望者が予定枠に届かないことが明らかになっており、不採用とする理由はまったくありません。

 懲戒処分などが不採用理由ですが、処分理由である保険料の不適正免除にしても業務命令として行われていたのが実態です。

 社保庁幹部や歴代政府の責任こそ問われるべきであって、不採用にするなど責任転嫁も甚だしく、不当な「二重処分」に当たるものです。

 法令無視で採用差別を行うのは、年金に対する国民の怒りを一般職員に向けさせ、財界の要求にこたえて公的年金の解体・縮小をすすめるためです。

 財界は新たなもうけ口のために私的年金の拡大や企業負担軽減のため消費税増税を財源にするよう求めてきました。年金機構では大幅な民間委託などが計画されています。

 しかし、これは公的年金を危うくするだけで、記録問題が解決することも年金制度がよくなることもなく、安心できる公的年金を求める国民との矛盾は避けられません。(深山直人)



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