2009年5月18日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPRESS

子どもの“居場所”守りたい


 東京都は、3つの子どもの病院を廃止して、1つに統合する計画をすすめています。廃止されようとしている都立梅ケ丘病院は、日本で最大の小児精神専門病院です。労働組合(都庁職病院支部梅ケ丘分会)に入り、存続と小児精神医療の充実を訴えてがんばっている若い看護師らに思いを聞きました。(文中は一部仮名)(染矢ゆう子)


廃止の危機

日本最大の小児精神医療専門 都立梅ケ丘病院

新米ナースら走る

落ち着ける環境が 何より必要だから

 梅ケ丘病院では看護師は、白衣ではなくジャージを着ます。理由は「子どもたちが白衣に緊張することなく遊べるから」。入院中も家庭に近い環境で生活できるようにし、遊び相手は看護師の大きな仕事です。

 「同じ年の子どもたちとけんかもしながら、どうしてけんかになるのか、関係をどう修復するのか、何度も話し合って地域に帰れるようにしていきます」と健司さんは説明します。

 病院には子どものために必要なグラウンドや学校もあります。

自然なくなる

 着任1カ月目の恭子さんは「子どもたちが新しい環境で落ち着けるのか」と心配します。移転先の都立府中病院(府中市)は、今も年間1万台の救急車が来る日本一、忙しい病院です。

 「『自分っていらない存在?』と子どもたちは何度も聞きます。安心できる答えを返すことで救われるんです。『けんかして嫌われちゃった』とすぐに不安になり、幻聴や幻覚、妄想にもとらわれています。落ち着ける環境が何よりも必要なのに」と恭子さんは訴えます。

 入院中の子どもたちの楽しみは1日2回、外に出て散歩や園芸をすることです。移転すれば自然もなくなります。

 九州出身の可奈さんは学生時代、発達障害をもつ小学生の家庭教師をしていました。

 パニックになる子どもを、病気とわかりながら周りを気にしてすごいけんまくで怒ったり、責めてしまう母親。夫婦の衝突も目のあたりにしてきました。

 可奈さんは「心の障害をもつ子どもは家族ぐるみで生きにくさを抱えています。子どもの可能性を少しでも広げたいし、梅ケ丘で学んだことを地元にもって帰りたい」と話します。梅ケ丘病院は不足している専門医をはじめ、スタッフ育成の場でもあるのです。

存続求め署名

 30代の香さんは重度の発達障害の病棟担当です。以前は水族館でイルカのトレーナーをしていました。子どもたちにイルカを使ったセラピー(心理療法)をすることが夢です。

 香さんは労働組合の仲間たちと、月2回、地元の駅前に立ち、存続を求める署名を訴えてきました。

 市民から「統合して大きな医療センターになればもっといい医療ができるのではないか」という声を聞くこともあるといいます。

 「子どもたちが新しい環境にチャレンジすることがどれほど大変なのか、なかなか伝わっていない」と香さん。多くの市民にわかってほしいと、宣伝に参加し続けています。

 「病院には日本中から外に出ることすらできない重度の子どもも集まります。日本は小児精神の分野はまだまだ遅れています。家族も病気を受け入れられず、いい療育を受けられないままどうしようもなく入院してくる子どもも多い。子どもたちのために、梅ケ丘病院を残し、小児精神医療を充実させたい」

都が病院つぶし!?

 東京都はこれまで産科やNICU(新生児集中治療室)のある5つの病院を廃止。梅ケ丘、清瀬小児、八王子小児の3つの病院を廃止する条例が3月27日の都議会で、自民党、公明党の賛成多数で可決されました。しかし、親や病院職員、地域住民らによる存続運動は続いています。日本共産党は3病院の廃止に一貫して反対しています。


 都立梅ケ丘病院 東京都世田谷区にある児童虐待による情緒障害や、自閉症をはじめとした発達障害、統合失調症などの治療を行っている病院。年間4万人が通院しています。北海道から飛行機で通院する家族もいます。


お悩みHunter

アルバイト、注意すべき点は

  大学に入学し、4月から親元を離れて暮らし始めました。アルバイトを始めようかと思っています。先輩に聞いたら「注意しないと、試験期間中でも休めなかったり、経営者の都合で勤務日を変えさせられたりするよ」と言われました。アルバイトの契約を結ぶときの注意点を教えてください。(20歳、男性)

労働条件聞き契約書もらおう

  アルバイトも労働者ですから、労働基準法やその他の労働法が適用されます。

 労働契約は、労働者と使用者が対等な立場で合意に基づいて締結するものです。(労働契約法3条1項)

 アルバイトに応募するときは、使用者が提示する労働条件を確認するだけでなく、あなたの希望を伝えたうえで、両者が一致した条件が労働契約の内容となります。(ただし、労働基準法に定める最低限度を下回る部分は無効となります)

 そして基本的な労働条件(労働契約期間、就業場所・業務内容、勤務時間・残業の有無・休日、賃金など)は、使用者は書面にして明示しなければなりませんから(労基法)、働くことが決まったら使用者に労働契約書の交付を求めましょう。

 使用者が上記契約とは異なる勤務日にあなたを就業させるには、あなたの同意が必要です。使用者の都合で勝手に変更できないのが原則です。

 明示された労働条件と実際の勤務が異なっている場合、労働者は労働契約を即時解除して仕事を辞めることができます。

 一度雇われたら経営者の言うとおりに働かなくてはならないと思っている方がいますが、これは大きな誤解です。労働法は、労働者を守るために他にもさまざまな権利を定めていますから、この機会にぜひ学習してください。


弁護士 岸 松江さん

 東京弁護士会所属、東京法律事務所勤務。日本弁護士連合会両性の平等に関する委員会委員。好きな言葉は「真実の力」。



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