2009年5月14日(木)「しんぶん赤旗」

世界経済危機とマルクスの理論

日中理論会談の報告会終わる 不破社研所長が縦横に語る


 日本共産党本部で開かれていた不破哲三社会科学研究所所長による中国共産党との理論会談の報告会は十三日、三日間の日程を終え、終了しました。報告会には、党本部の諸部門と直属の各分野の党組織から三百数十人が参加。「現代にマルクスの理論が生きていると実感した」などの感想が寄せられました。


新自由主義、「ルールある資本主義」をどう見るか

写真

(写真)報告する不破哲三社会科学研究所所長=13日、党本部

 不破氏は、二日目(十二日)には、会談の第二の主題である「現代資本主義への金融危機の影響」での会談内容について報告しました。

 中国側から提起されていた中心テーマは、新自由主義の内容、資本主義体制のアメリカ、ヨーロッパ、日本など国ごとのあり方、世界経済の構造変化の見通しなどでした。不破氏は新自由主義について、アメリカが中心になって推し進めた資本主義の政策体系としてとらえて、その三つの柱(資本の横暴にたいする社会的規制の否定、利潤獲得の主舞台を金融経済に求める、アメリカ型システムの世界への押し付け)を特徴付け、それを生み出したアメリカ資本主義の問題点や今日の経済危機に果たした役割を説明しました。

 また、ヨーロッパの「ルールある資本主義」が、マルクスが『資本論』で高い評価を与えた工場法を出発点とし、労働者・人民の闘争を土台にしたその後の発展をふくめて、資本の横暴にたいする「社会的規制」の現代的な形態となっていることを歴史的に解明。世界の構造変化の問題では、経済危機以前に世界の経済的力関係の大きな変化がすでに進行していたことを指摘。資本主義一色の体制となっている現在の経済秩序を、この構造変化にあわせて改革する「新国際経済秩序」の形成が今日的な課題となっていることを力説しました。

資本主義世界での革命運動の「発展戦略」をめぐって

 三日目(十三日)、報告は第三の主題「世界の社会主義への金融危機の影響」にすすみました。

 ここでは、経済危機を迎えた資本主義世界で活動する共産党の「発展戦略」のあり方、中国など社会主義をめざす国々の現状と今後が問題になります。

 不破氏は、資本主義世界での革命運動の問題について、経済危機が自動的に資本主義の終末をもたらすものではなく、革命の主体的条件の成長・成熟が決定的な問題であること、とくにその国での社会主義的多数派の形成が社会変革の不可欠の条件をなし、そこにいかにして接近するかが「発展戦略」の核心をなすことを提起。その角度から日本共産党の綱領路線の意義を解明するとともに、ヨーロッパでの二十世紀後半の経験が示すいくつかの教訓についても見解を述べました。さらに、世界の一部に、スターリン時代のソ連を社会主義のモデルとする一つの国際的潮流が存在し、逆流的な作用をおよぼす危険があることも指摘しました。

 不破氏は、ラテンアメリカの左派政権の前途についての質問に答え、マルクスの教訓にも学びながら、独自の立場で社会主義への道を進もうとする革命にたいしてとるべき立場について意見を述べました。

社会主義の国が直面する課題でも率直な意見を

 社会主義をめざす国の現状と今後の問題で不破氏は、経済恐慌などは本来的には資本主義に固有のものだが、これらの国々が、国際・国内で資本主義との共存の関係にある現状では、資本主義発の経済危機がここでも影響をおよぼすことは避けられないとして、その波及の経路、経済危機への対応において、これらの国々が持つ体制的な優位点と問題点について、見解を述べたことを報告しました。

 また、社会主義をめざす国が今後ぶつかる「リスクとチャレンジ」についての質問では、どんな事態でも、それを打開するカギとなるのは、社会主義への道を前進することへの国民の自覚と意欲の強さと広がりだと指摘。社会主義社会をつくりあげる過程は数世代にわたる長期の過程であり、そこには、この過程で社会主義的自覚を世代から世代へいかにして継承していくかは、社会主義の運動が直面する新しい課題ではないかという問題を提起、その問題についてのいくつかの見解を示しました。

 理論会談でとりあげられた主要点についての報告を終えたあと、不破氏は、一九九八年に日中両党の関係を正常化して以後の歴史をふりかえり、世界の社会主義運動が複雑な状況にあるなかで、資本主義世界で活動している日本共産党と、社会主義をめざす国で政権についている中国共産党が、科学的社会主義(マルクス主義)を共通の土台として理論交流を発展させていることの特別の意義を強調して、報告を結びました。


参加者の感想から

 報告会の参加者からは「世界経済危機を金融危機の側面からだけみていた。土台は過剰生産恐慌だとみることで、課題や対応の仕方がすっきりした」「マルクスの恐慌論の核心がつかめた」「新自由主義のとらえ方が圧巻」「世界の構造変化はすごい。新国際経済秩序を提起する今日的意義がわかった」「ドキドキしながらメモをとった。『資本論』を身につけたい」「経済危機と社会主義への道と結びつけた日本共産党の綱領路線の意義の解明は新鮮だった」「日中両党でマルクス主義を土台に理論交流できることはすばらしい。日本共産党の理論への中国側の関心の強さを感じた。理論交流のさらなる発展に期待したい」などの感想が寄せられました。



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