2009年5月9日(土)「しんぶん赤旗」

宇宙基本計画案

研究制約する“軍事の網”

防衛省との連携迫る


 政府の宇宙開発戦略本部(本部長・麻生太郎首相)が四月末に発表した、宇宙基本計画案。有人宇宙活動、天文衛星や惑星探査機など華々しい計画の裏で、自衛隊による軍事衛星の活用を初めて国家戦略として位置づける危険な内容です。同時に、これまで軍事とは無関係だった研究の分野にまで防衛省との連携を迫り、軍事機密の網で自由な研究活動を脅かしかねない重大な問題をはらんでいます。


 「我が国における宇宙の開発及び利用に係る諸活動は、平和の目的に限り、かつ、自主、民主、公開、国際協力の原則の下にこれを行うこと」。日本の宇宙開発利用の原点ともいえる国会決議です(一九六九年、参院特別委員会)。

「平和目的」脱落

 ところが、今回の計画案では「平和の目的に限り」がすっぽり抜け落ちているばかりか、「自主、民主、公開、国際協力の原則を尊重しつつ推進する」と明記されたのは、陸域・海域観測や気象、通信、有人宇宙活動といった九つの分野のうち、天文衛星などの「宇宙科学」分野のみ。しかもあくまで「尊重」という位置づけです。他の八分野には、原則は明記されていません。

 一方で計画案は、画像衛星の研究開発について「安全保障上のデータ管理」が必要だとして、撮影や画像配布を規制するルールを要求。また、民生技術を防衛分野で積極的に活用するための「関係機関間の連携」の必要性をあげています。

学術交流を敵視

 基本計画の策定作業と並行して、防衛省も宇宙利用の検討を進めてきました。そのなかで、資源探査衛星の光学センサー(検出器)の防衛用途への応用や、民生・学術分野の技術をもつ研究機関との「協力関係の構築」をうたっています。

 もともと、軍事技術と研究の自由とは相いれないものです。宇宙基本法を推進した自民党は「わが国においては、平和利用決議の下で、特段の注意を払うことなく積極的な学術交流を行っているが、諸外国に見られるような厳格な技術管理がなされているとは言いがたい」(二〇〇六年の宇宙開発特別委員会報告書)と、自由な学術交流を敵視。同法に「情報の適切な管理」が盛り込まれた経緯があります。

JAXA移管も

 一方、日本の宇宙開発を担う宇宙航空研究開発機構(JAXA)の立川敬二理事長は四月の国会で、軍事研究を引き受ける可能性を問われ「事案ごとに具体的な話があれば政府と相談して確定したい」と述べ、容認の姿勢を示しました。(日本共産党の吉井英勝衆院議員への答弁)

 政府は、JAXAの所管を学術研究中心の文部科学省から切り離し、内閣府に移管することも狙っています。研究の自由を制約する計画案の先には、科学者を軍事研究に動員する意図があることは明白です。(中村秀生)


 宇宙基本法と宇宙基本計画 宇宙基本法は、宇宙の軍事利用に公然と道を開く狙いで、昨年、自民・公明・民主の各党が強行した法律。同法にもとづいて現在、政府は今後の宇宙開発利用の指針となる宇宙基本計画の策定作業を進めています。同計画案への国民の意見を五月十八日まで募り、同月下旬に正式決定される予定です。



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