2009年5月4日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

廃食油・残材で燃料

温暖化防止へ製造施設完成


 地球温暖化防止対策が各地で取り組まれています。山梨市(人口約三万八千人)では今春、廃食油や製材の残材を新エネルギーにする施設が完成しました。温暖化対策のため尽力している日本共産党の吉田昭男市議の案内で、その現場を訪ねました。(栗山正隆)


山梨市に見る

地図

 山梨市は二〇〇六年二月、「地域新エネルギービジョン」を発表し、温暖化防止の施策をすすめてきました。

公用車に使用

 その一つが廃食油対策です。市は環境センターに、ごみ焼却、し尿処理の施設に加え、廃食油でバイオディーゼルエンジン燃料を製造する施設をつくり、今年四月から操業しています。

 管理担当者が「見学にきた子どもたちが、天ぷらのにおいがするといいましてね」と話し、施設の説明をしました。家庭、学校給食から出る廃食油(植物性)を精製しています。当面、市のスクールバス、トラックなど公用車の軽油代替燃料八割をつくる計画です。「いまは収集量が少なく、週に一日(二百リットル)の精製です」

 市内の廃食油一日あたり利用可能量(推定値、〇六年度市調査)が「家庭百二十九リットル、公共施設九リットル」(〇八年二月、市調査報告書)ですから、その二割でのスタートです。

 市は地区ごとのリサイクルステーションに廃食油収集箱を置き、住民に協力を呼びかけています。吉田さんは「市として、温暖化対策の重要さを広報などで住民に理解していただくためのいっそうの努力が必要ですね」と話しました。

ストーブ補助

 山梨県で初めて三月から製材の残材でつくる木質ペレット(小粒固形燃料)の製造を開始した飯島製材所を訪ねました。県有林の木を製材し、残材をペレットにしています。飯島一省(かずよし)代表は「廃棄していた残材を活用し、CO2(二酸化炭素=温暖化の主要ガス)削減につながるものをと考えて、市、県の協力と国の補助を受けて始めました」と述べます。

 ペレットを一キロ四十五円(一時間―一時間半燃焼)で出荷しています。民間研修施設(北杜市)の暖房、給湯用として使っていますが、課題はストーブの普及です。十―二十畳用で二十万円前後という高価格が普及できない要因になっています。市は一月からストーブ設置者に設置費の一割、上限三万円の補助を始めました。

 吉田さんは、総面積の82%が山林・原野である市として残材活用による温暖化防止、森林育成などの意義を述べ、「地産地消、自然エネルギー活用のため協働をすすめていきたい」と話しました。


山梨市の主な施策

 ▲家庭用廃食油の回収・バイオディーゼルエンジン燃料製造とその公用車利用▲中学校屋上へ風力発電機の実験設置▲民間企業のペレット製造設備に補助▲ペレット・まきストーブ購入者への助成▲新庁舎への太陽光発電、ペレットストーブの導入▲小水力発電所建設の可能性調査

昨年12月議会から

 吉田昭男議員 CO2削減には行政と住民の協働が必要です。広報や市民講座等で情報提供したり市民のアイデアを取り入れる必要があります。

 中村照人市長 協働によるまちづくりにもつながるので、検討をすすめていきたい。


国の支援策 改善さらに

 自治体による新エネルギー導入に対する国の支援は、太陽光・熱、風力、バイオマス、雪氷、小水力、天然ガスコジェネ(熱電併給)、燃料電池、地中熱ヒートポンプ等の導入への補助(経産省、環境省)、下水処理場でのバイオガス利用や小水力発電導入への補助(国交省)、電気自動車、ハイブリッド車、天然ガス車など低公害車導入への補助(環境省)などさまざまな各種の支援があります。

 新エネルギー導入計画策定への補助(経産省)や、自治体による住宅用太陽光発電導入支援事業への補助(環境省)、自治体と連携した市民共同出資型の小水力発電への補助(環境省)もあります。地域の特性に応じた実践的な廃棄物系バイオマス利活用実証事業(環境省)、学校での新エネ利用や地域材利用などを進めるエコスクール(文科・農水・経産・環境4省連携)などのモデル事業も行われています。

 地域的な取り組みへの国の支援としては、農村地域における太陽光発電や農業用水路を活用した小水力発電などの整備、バイオガスや木質ペレット(小粒の固形燃料)等の利用に対する支援(農水省)、都市部の緑化や自転車利用環境整備への支援(国交省)、都市再開発に対する温暖化対策評価への支援(環境省)などがあります。

 自治体向けではありませんが、住宅用太陽光発電設置補助(経産省)が今年から復活したことは、日本共産党や市民団体が強く要求してきた成果であり重要です。ただし、一キロワットあたり七万円という補助額は低すぎるので、増額を求めていく必要があります。

 また政府は、来年度から、住宅用太陽光発電による電力のうち各家庭の消費分を除く余剰電力を電気料金の倍額で電力会社に買い取らせる制度を始めるとしています。この固定価格買い取り制度も、日本共産党や市民団体が要求してきたものですが、太陽光、風力、小水力、バイオマスなど多様な自然エネルギー発電への対象拡大、買い取り価格の増額など、抜本的な改善を求めていく必要があります。

 (日本共産党中央委員会学術文化委員会事務局 鈴木剛)


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