2009年5月2日(土)「しんぶん赤旗」

米、新たな核戦略を模索

核研究所の見直し 国防総省移管案も


 オバマ米大統領が「核兵器のない世界」の実現という新しい方針を打ち出し、新たな核戦略を模索するもとで、米国の核兵器を生み出してきた研究所の将来も見直しが迫られています。


 現在、米エネルギー省管轄の核兵器関連施設は九カ所。核兵器の開発に携わってきた研究所はサンディア、ロスアラモス、ローレンス・リバモアの三カ所あります。ことにロスアラモス、ローレンス・リバモア両研究所は「老朽化」した核弾頭を改良するという「信頼できる交代用核弾頭」(RRW)計画の中心的な担い手でもあります。

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 ところがオバマ政権は二月に公表した「予算教書」の概要で、RRW関連費用の削除を明記しました。連邦議会も同月発表した二〇〇九会計年度予算で、RRW関連費用は「予算がどのように使われるのかが議会に示されておらず、認めない」(下院歳出委員会の声明)という立場です。RRW計画は事実上、消滅したとさえいわれています。

 エネルギー省の国家核安全保障局(NNSA)は現在、RRW計画推進を前提とした核研究所の再編をすすめています。しかし、ローレンス・リバモア研究所で研究・開発に携わったフィリップ・コイル氏は三月十七日の下院歳出委員会の公聴会で、同計画が中止になるなら、核研究所再編計画の予算は半減できると証言。大胆な見直しが必要との認識を示しました。

 エネルギー省予算(〇八会計年度で二百四十一億ドル)の約三分の一が核兵器関連。さらにそのうち三分の二が核兵器の維持・管理に使われています。

 オバマ政権のもとでエネルギー省は、新エネルギー開発に重点を置くため、この機会に核兵器関連の事業を切り離すことも視野に入れています。ホワイトハウスの管理予算局(OMB)は三月、エネルギー省の核関連事業を国防総省もしくは独立の政府機関に移管することを検討し、九月までに報告するよう、関係省庁に求めました。

 米国の研究組織「ヘンリー・スチムソン・センター」は三月五日に公表した報告書で、核研究所のエネルギー省からの「独立」の方針を打ち出し、「二十一世紀において米国が地球的規模で科学・技術面での指導性を発揮」できるようにすべきだと主張しました。

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 ただこうした一連の動きには異論もあります。下院軍事委員会戦略戦力小委員会のタウシャー委員長(民主)は二月、OMBのオーザグ局長に書簡を送り、「核兵器研究所とその関連施設の文民による統制は、軍からの独立をある程度確保するために確立された」と述べ、国防総省への移管計画を批判しています。(山崎伸治)


 米エネルギー省と核兵器 第二次世界大戦中の「マンハッタン計画」に始まった米国の核兵器開発は戦後、原子力研究を軍の手から離すために創設された政府独立機関「原子力委員会」が継続。七七年にエネルギー省が設立されると、核兵器開発を含む同委員会の業務は同省に移管されました。



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