2009年4月27日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPRESS

見てほしい光る個性

引きこもり経験者たちの作品展

高校中退・いじめ・パニック障害…のたうちまわって社会とかかわる


 引きこもりの経験のある青年たちが描いた絵画などの作品を集めた「第3回片隅にいる私たちの創造展」が、5月3、4の両日、東京都葛飾区の東京聖栄大学で開かれます。主催はNPO法人不登校情報センター(松田武己理事長)。出品する青年たちに思いを聞きました。(岩井亜紀)


 「模索っていうか、のたうちまわっているんですよね」―。大柄な山田隆さん(38)=仮名=は、言葉を選びながら、はっきりした口調で話します。

 現在、安定した収入を得るにはどうしたらいいか悩んでいます。両親に相談すると、必ず口論になってしまいます。

進路めぐり両親と口論

 山田さんは高校になじめず授業にもついていけなくなり、体調を崩して中退しました。進路をめぐって両親と激しい言い争いになったことがあります。本人は絵の道に進みたかったのですが、両親は父親と同じ医者になってほしかったようです。

 以来、冷静に話ができなくなり、部屋に引きこもるようになりました。

 30歳を過ぎてから定時制高校に入学し卒業。現在は一人暮らしで、「絵が生活の基盤となればいい」との思いを抱きながら、派遣会社数社に登録し生活費を稼いでいます。

 山田さんの絵は、マーカーでカラフルに描かれ、独特の雰囲気があります。「絵を出すのは恥ずかしい。でも、批評にさらされないと芽が出ないし…」

 風景写真を出展予定の中根暁さん(40)=仮名=。小、中学生のときいじめで悩み、高校生のときにパニック障害に苦しみました。

 高校は卒業しましたが、デザインの専門学校は中退し、その後引きこもり状態になりました。山田さんとは対照的に物静かな感じの青年です。

就職以外の方法探して

 2年前まで10年間、パートで教材の印刷などの仕事をしていましたが、人間関係でつまずきます。現在は時々短期のアルバイトをしながら、両親と暮らしています。

 年齢のことを考えると、不安やあせりが出てきています。「就職しなくても社会参加できる方法はないか」「自分にしかできない仕事があるのではないか」―。出口のない思いが中根さんを苦しめています。

 「社会に入っていけず、逃げてしまう。群れることに嫌悪感さえある」と話す中根さん。「大勢のなかに埋没したくはないです」

命絶った青年の鉛筆画から始まった

不登校情報センター理事長

松田武己さんの話

 不登校情報センターでは、不登校、引きこもり経験者の社会参加につながる取り組みをしています。

 アルバイトや就職をしても、人間関係のなかで隅っこに追いやられ、自己否定感を持ちながらやむなく働く人たち。社会とのかかわりは就職だけではありません。

 対人関係を苦手とする引きこもり経験者の多くは、絵やコラムなどの創作活動に関心が非常に高いと感じます。

 引きこもりの30代の女性は、コラージュの創作活動が生活リズムとなっています。「部屋に置く場所がないから」と作品を送ってきました。

 4年前に自殺した太田勝巳さん(34)=当時=は、青色が基調のはがき大の鉛筆画を1万点も残しました。亡くなった太田さんの作品展示会が創作展の出発です。

 こうした人たちの社会参加のひとつの方法として、創作活動を位置づけられないか―。

 これは小さな、小さな一歩です。それでも、引きこもり経験者たちが自己肯定できる可能性の高い創作活動を、社会デビューの形として定着させたい。

第3回 片隅にいる私たちの創造展

日 時 5月3日―4日
     午前10時―午後5時

会 場 東京聖栄大学
     1号館4階141教室
(JR総武線新小岩駅 北口徒歩1分)

入場無料

主催・問い合わせ

 NPO不登校情報センター
 03(3654)0181 松田さん

30日まで作品募集

 同展には絵画だけでなく、アニメ・漫画、詩や小説、アクセサリー、服などさまざまな創作品が並びます。開催中は、出展者を囲んで作品づくりや今後も交流できるように話し合う場を設けます。

 今月30日まで作品を募集しています。出展希望者は同日までに連絡が必要です。


お悩みHunter

親友が「自分勝手に生きる」と

  高校生のころから、いっしょに生徒会や核兵器廃絶の署名運動などに頑張ってきた親友が、「いくら、おれらががんばっても世の中、ちっとも良くならない。これからは自分勝手に生きることにした」と言い出しました。どんなふうに説得したらいいのかわかりません。(18歳、男性)

今できるのは信じて待つこと

  あなたにとってご友人は何でも話し合えるとても大切な仲間だったと思います。その仲間が、展望が持てずに離れてしまうのはとてもつらいですね。

 たしかに自分たちが一生懸命に活動しているのに社会が良くなっていかない、訴えが周りに届いていかない、と感じることがあるかもしれません。

 しかし社会は確実に変わっています。あのアメリカのオバマ大統領も核兵器廃絶を訴えました。他国のトップの発言ですから、あまりにも遠すぎて自分たちの活動とは無縁に思えますが、決してそんなことはありません。

 世界中の人たち一人ひとりの力の結集があの発言につながっていると確信しています。

 「社会は変わるし変えられる」「私たちは微力だが無力ではない」ことに、ご友人も気づいてほしいですね。

 しかし、いまご友人にかける言葉としてはそんな説明とか説得ではないような気がします。いまご友人は、ともに活動してきた仲間の存在を見失っているのかもしれません。

 活動は仲間がいるからがんばれるものです。まずはご友人に「いままでありがとう。お疲れさま」という言葉をメールでもいいのでかけてあげてください。そしてご友人がもう一度向き合ってくれることを信じて、待つ。それがいまできることだと思います。

 私もご友人を信じています。


第41代日本ウエルター級チャンピオン 小林 秀一さん

 東京工業大学卒。家業の豆腐屋を継ぎながらボクシングでプロデビュー。99年新人王。03年第41代日本ウエルター級チャンピオン。



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