2009年4月24日(金)「しんぶん赤旗」

「海賊対処」派兵新法案にたいする

赤嶺議員の反対討論

衆院本会議


 日本共産党の赤嶺政賢議員が二十三日の衆院本会議でおこなった「海賊対処」派兵新法案にたいする反対討論は次のとおりです。


 「海賊対処」派兵新法案は、国連海洋法条約に則して、海上保安庁が国籍を問わず海賊行為を処罰し対処することを前面に出していますが、その核心は、自衛隊に「海賊対処行動」という新たな海外任務を与えることにあります。

 しかし、軍隊の派遣では、ソマリア沖の海賊問題は解決できません。

 昨年から、各国がソマリア沖に軍隊を派遣し、政府も自衛隊を派遣しましたが、海賊事件は減るどころか、逆に増えています。海賊が広域化し、軍隊が活動していない海域に活動拠点を移しているからです。まさに「いたちごっこ」になっているのです。軍隊の活動で問題が解決できないことは、現地の米軍司令官自身が認めています。

 ソマリアの内戦と貧困という「陸」の問題が解決しない限り、海賊という「海」の問題も解決しないことは、国際社会の共通認識です。

 ソマリアでは、一九九一年以降、内戦状態がつづき、国連PKO初の平和執行部隊の派遣、「対テロ戦争」の名による米軍の空爆と軍事介入が行われてきました。外国漁船による違法操業、有毒廃棄物の不法投棄が横行し、これが、元漁民を海賊行為に走らせたと言われています。これまでの国際社会の関与のあり方が問われているのです。

 ソマリア暫定連邦政府のアハメド大統領は、ソマリアの治安部隊を確立するための国際援助があれば、「海賊の攻撃の四分の三は防止できる」と発言しています。

 憲法九条をもつ日本がやるべきは、自衛隊の派遣ではなく、こうした現地ソマリアと周辺国の海上警察力の強化のための技術援助・財政援助であり、根本問題であるソマリアの内戦終結と貧困の解決のための外交努力と民生支援です。

 政府は「自衛隊が行う海賊対処は警察活動だ」と言いますが、現地では、米軍をはじめ、各国軍隊と協力して任務を遂行するとしています。

 米軍は、自衛隊が活動するソマリア沖・アデン湾で、「海賊対処」だけを行っているわけではありません。対テロ戦争やソマリア本土への空爆など、さまざまな軍事作戦を混然一体となってすすめています。

 その米軍に海上自衛隊のP3C哨戒機や護衛艦が情報提供を行えば、米軍の軍事作戦全体を支援することになるのは明らかです。

 しかも、政府が自衛隊派遣の根拠の一つとする国連安保理決議は、アメリカ主導で採択されたものであり、国連憲章第七章に言及し、ソマリア空爆を含む「あらゆる必要な措置をとる」権限まで与えているのです。

 現に、アメリカは、海賊が陸上の拠点から海に出てきた時点を攻撃することを検討していると報じられています。

 軍隊による「海賊対処」は、さらなる情勢の悪化を招きかねません。

 国際海事局は、軍事介入は海賊の凶暴化を招きかねないと警告を発してきましたが、米軍が人質救出のために海賊三人を射殺したことに対し、海賊が「報復」を宣言する事態になっています。

 さらに、アルカイダ系組織がソマリア沖の各国軍艦に対する攻撃を呼びかけ、アメリカはソマリアのイスラム系過激派組織の訓練キャンプに対する軍事攻撃を検討しています。

 力でねじふせるやり方は、事態を悪化させるだけです。自衛隊の派遣はただちに中止すべきです。

 武器使用も重大です。本法案は、抵抗・逃亡する海賊への危害射撃、海賊行為を制止するための船体射撃を規定しています。しかし、「ほとんどの場合、海賊船と漁船は同じに見える」と米海軍の専門家も指摘しています。遠く離れたソマリア沖で、自衛隊が戦後初めて、人を殺傷しかねないのです。

 「海賊対処」を口実に、自衛隊の海外での武力行使、海外派兵恒久法に道を開く本法案は、きっぱり廃案にするよう求めます。

【Movie】「海賊対処」法案に対する赤嶺議員の反対討論 衆院本会議(09.4.23)



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