2009年4月22日(水)「しんぶん赤旗」

農地法等「改正」案についての見解

もうけ本位の農外企業に農地をゆだねるわけにはいかない (上)

日本共産党国会議員団


 日本共産党国会議員団が二十一日に発表した「農地法等『改正』案についての見解」はつぎのとおりです。


 いま農地法等の「改正」案が国会で審議されています。農地法の目的まで見直し、農地の貸借を全面自由化し、企業の農業参入に大きく道を開く、一九五二年農地法制定以来の大転換です。

 日本共産党は、法案が、家族経営中心の農業を解体し、食料の自給率向上や環境の保全などに重大な障害を持ち込むものとして、強く反対し、廃案を求めます。あわせて、農地の荒廃をくいとめ、全面的な活用が可能となる農政の実現にむけて国民的な運動を呼びかけます。

“農地は耕作者のもの”という原則を放棄して農地は守れない

 「改正」案の最大の問題は、農地法の根幹である“農地は耕作者のもの”という原則(耕作者主義)を解体するところにあります。みずから農作業に従事するものにのみ農地に関する権利を認めるこの原則は、農家が安心して営農に取り組める基盤となり、農外企業による農地の投機や買い占め、農地の他用途転用にたいする防波堤の役割を果たしてきました。戦後民主主義の原点の一つである農地改革を具体化し、農業と農村社会の安定の土台となってきたものです。

 「改正」案は、第一条の目的から、「耕作者の農地の取得を促進し、その権利を保護し、…地位の安定…を図る」を外し、「農地を効率的に利用する者…の権利の取得の促進」に置き換えています。「耕作者」という文言をいっさい削除し、「耕作者」の権利を重視する法制度から、「効率的な利用」が図れれば農外企業でも誰でもいいという考え方への転換です。

 今日、農地には食料生産の基盤であるとともに環境や国土の保全、住民の暮らしや就業の場の確保、伝統や文化をはぐくむ地域の共有財産としての役割も求められています。そうした多面的な役割を担ううえでも、もっともふさわしいのが耕作者主義の原則です。「改正」案は、そうした時代の要請に逆行するものといわなければなりません。

「所有権」の自由化に連動するのは必至

 政府は、今回自由化するのは農地の「貸借」に限り、「所有権」については従来の規制を維持するといいます。確かに、農地の権利移転の要件を定めた第三条には「農作業に常時従事する者」以外には許可しないという規定を残しています。しかし、その根拠となる第一条の理念を放棄して、個別条項でいつまでも維持できるのでしょうか。第一条で「農地は耕作者みずから所有がもっとも適当」とする規定を削除したことも、「誰が所有してもいい」という議論になるのは必至です。貸付農地(小作地)の所有を制限する規定を廃止することも、地主的な農地所有や貸出目的による農地取得も自由となりかねません。「改正」案は、農地の「利用権」にとどまらず、「所有権」の自由化に道を開くものとみないわけにはいきません。

“適正利用の監視”で農地は守れるか

 「改正」案では、「必要な機械を保有し」「農作業に従事する人の数」を確保すれば、外資系を含めてどんな企業でも、「貸借」を許可することにならざるをえません。そうした企業は、当面の農業経営は維持しても、利益がでなければ、容易に撤退を選択するか、農地利用を放棄するのは予測できます。政府は、「貸借」は、「適正利用」に反すれば貸借解除する旨の契約を結んだ企業などに限定する、といいます。しかし、貸し手と借り手の双方が貸借の継続を望めば、そうした契約が「不適正利用」の実効ある歯止めにはなりえません。そして、「適正利用」に反する事態が大規模に発生すれば、その解決に多大な時間とコストが必要になるでしょう。

 今回、農業委員会に、農地の利用状況を調査し、「適正」かどうかを判断し、必要な措置をとる役割を与えています。しかし、近年、大規模な市町村合併や委員定数の大幅削減、予算の削減などで農業委員会を弱体化させてきたのも政府です。その現状をそのままに、“入り口”を開放し、「違反したら事後に是正させる」などといっても“絵に描いたもち”になるのは必至です。

農業生産法人への企業参加もいっそう容易に

 「改正」案は、農外企業の農業生産法人を活用した農地進出の窓口も一段と広げています。農業生産法人の制度は、「みずから農作業に従事する」性格が保たれる法人に限って農地取得の道を開いたもので、今日その大半は、農家の共同組織として地域農業で重要な役割をはたしています。ところが近年、「耕作者主義」を貫くために厳格に定められた法人の要件が、財界の要求でたびたび緩和されてきました。関連企業が構成員になる場合、運営・方針などの議決権を一企業10%以下、合計でも四分の一以下に広げられてきたのもその一つです。今回はそれをさらに、一企業10%以下の制限を外し、特定の関連企業の場合には議決権を50%未満まで認めるとしています。農業生産法人にたいする農外企業の実質的な支配をいっそう容易にするものです。

借地農業の実態や関係者の要求とも矛盾

 「改正」案は、標準小作料の制度を廃止しています。農業委員会が地域の実態に即して定める標準小作料は、借地料の目安として借り手・貸し手の双方から高く評価されてきました。その廃止は、農外企業がより高い借地料で農地を集めることを可能にします。賃貸借期間の制限も、「二十年以下」から「五十年以下」に延長しています。所有権に限りなく近い期間です。いずれも、企業参入自由化と一体で財界が要求してきたもので、「利用」重視といいながら、農地を借りて営まれている農業の実態や関係者の要求とは矛盾するといわなければなりません。(つづく)



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