2009年4月19日(日)「しんぶん赤旗」

ソマリア沖

海賊件数激増 昨年の2.5倍ペース

軍事対応の限界示す


 ソマリア沖海賊対策として、海上自衛隊の護衛艦が同国北方のアデン湾で活動を始めて三週間。国会では、ソマリア沖にとどまらず、自衛隊の海外派兵を拡大・強化させる、「海賊対処」派兵新法案の審議が始まりました。現地では、自衛隊を含め各国が艦船派遣を強めるなか、海賊件数は増加の一途をたどっています。

沿岸数百マイルでも

 国際商業会議所の国際海事局(IMB)は三月三十一日、ソマリアとイエメンにはさまれ、各国艦船が多数展開しているアデン湾ではなく、ソマリア東方のインド洋沖で海賊件数が激増しているとの報告を発表しました。今年一月にはゼロ件、同二月は二件だったのが、三月には十五件。ムクンダンIMB局長は、「襲撃件数は減っておらず、憂慮される事態の進展だ。海賊集団はソマリア沿岸から数百マイル離れた所で活動できることを証明した」と語ります。

 外務省によると、四月十四日までの今年の海賊発生件数は七十四件。四月だけで二十件起きています。うちハイジャックされた船舶は十五隻。十三隻の船が抑留され、二百三十人の乗員が人質になっています。昨年の発生件数は年間で百十一件(IMB)なので、今年は二倍半近いペースで事件が起きていることになります。

 「海賊対処」派兵新法案が審議入りした十五日、衆院の「海賊対処」特別委員会で質問にたった日本共産党の赤嶺政賢議員は、「海賊は(護衛)体制の手薄な海域に拠点を移すだけではないか」「活動そのものに無理がある」と指摘。浜田靖一防衛相も、「彼ら(海賊)なりにいろいろ考えている」とし、「アデン湾(の対処)で精いっぱいで、インド洋側に対処する考えはない」と答弁。艦船での対応に限界があることを認めました。

地域自ら対応を

 派兵している各国の対応もエスカレートしています。四月十日にはフランス軍が、人質解放のためソマリア沖で乗っ取られたヨットに作戦を強行し、人質一人と海賊二人が死亡。十二日には、米貨物船船長救出のため米軍が特殊部隊を投入し、海賊三人を射殺。十四日には米船舶への襲撃事件が再び発生しました。

 現地からの報道によると、メンバーを殺害された海賊側は、米仏両国への報復を表明。身代金が目当ての海賊はこれまで、人質を含め、殺傷行為は控えていましたが、ソマリア中部を拠点に活動する海賊の指導者は、「今後、人質に何かが起こった場合、米兵とフランス兵を殺害する」と言明。インド洋周辺海域を担当する米第五艦隊のゴートニー司令官も「暴力がエスカレートするのは疑いない」と発言しました。

 三月末、東京都内で演説した国連の専門機関・国際海事機関(IMO)の関水康司海上安全部長は、艦船による抑止力の維持も必要だとしながら、あくまでもこれは「対症療法」だと指摘。「ソマリア海賊問題で、IMOが最も力を入れていきたいと考えているのは、地域自らがこの問題に取り組むこと。地域が協力して取り組んでいくことが最終的な目的」だと語っています。(遠藤誠二)


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