2009年4月16日(木)「しんぶん赤旗」
米特使、中東歴訪を開始
「二国家共存」方針合意はかる
【カイロ=松本眞志】米国のミッチェル中東特使が十四日から、就任後三回目の中東歴訪を開始しました。アルジェリア、モロッコ、イスラエル、パレスチナ、エジプト、湾岸諸国を訪れます。
これまで二回の訪問で聞き役に徹したミッチェル氏は今回、イスラエルで右派主導のネタニヤフ政権が成立したことを受け、オバマ米大統領が主唱するイスラエル・パレスチナの「二国家共存」方針の合意をはかることを目的にしているとされます。
ミッチェル氏は三月、イスラエル新政権への対応を検討するために専門家や識者との会合をワシントンで開き、アラブ側の中東包括和平構想(アラブ和平案)を米国の中東政策の一部に取り入れることを明らかにしました。オバマ氏自身もサウジアラビアのアブドラ国王との直接会談で、同和平案の支持を表明しています。
一方、イスラエル新政権のネタニヤフ首相(リクード党首)は、和平交渉実施を掲げながらパレスチナ国家の承認については言及を避けてきました。極右「わが家イスラエル」のリーベルマン外相は、一九九三年のオスロ合意を否定して二〇〇七年の米アナポリスでの中東和平合意を「無価値」と退け、イラン対策を含む安保問題を優先させる意向を示しています。
ネタニヤフ、リーベルマン両氏の和平への消極姿勢に対し、イスラエル国内でも批判の声があがっています。ハーレツ紙は社説で、「イスラエルはリーベルマン氏の誤りに重い対価を払うことになるだろう」と警告。イディオト・アハロノト紙は、過去にネタニヤフ氏がオスロ合意を受け入れた事実を指摘し、「リーベルマン氏は(過去の)基本的事実を学ぶ必要がある」と批判しました。
中東包括和平構想 イスラエルのパレスチナ占領地からの全面撤退、東エルサレムを首都とするパレスチナ国家実現と引き換えに、アラブ諸国がイスラエルとの関係を正常化するというもの。サウジアラビアのアブドラ国王が提唱し、二〇〇七年三月のアラブ連盟首脳会議で確認されました。

