2009年4月14日(火)「しんぶん赤旗」

横須賀で原子炉修理か

米軍が空母用に施設

太平洋軍司令官 議会証言で判明

日米約束ほごに


 昨年九月に原子力空母ジョージ・ワシントン(GW)が配備された米海軍横須賀基地(神奈川県)に、同空母の原子力推進プラント(機関)に関連した装置や部品の修理施設が造られていることが、米太平洋軍のキーティング司令官の議会証言で分かりました。日本政府や米軍はこれまで「日本では原子炉の修理はしない」「放射能管理を必要とする作業はしない」と約束し、原子力空母の放射能事故などに対する日本国民の不安を打ち消そうとしてきました。同施設の存在は、その約束がほごにされている恐れが極めて濃厚であることを示すものです。


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(写真)原子力空母ジョージ・ワシントンとCIFとみられる 施設(その右)=11日、神奈川県・米海軍横須賀基地

 キーティング司令官の証言は、米下院歳出委員会軍事建設小委員会が今年三月十九日に開いた公聴会で行われたもの。

 同司令官は議員の質問に対し、日本には、原子力空母に関する「管理産業施設」(CIF)という施設があることを認め、「それがない場所には原子力空母を恒常的に駐留させることはない」と述べました。

 米軍の港湾施設の基準を定めた米国防総省の文書(二〇〇五年七月)によると、CIFは(1)海軍の原子力推進プラントに関連し、放射線管理がされる装置や部品の点検・改修・修理(2)放射線管理がされる液体や固形物を廃棄するための処理・再生・こん包―を行う施設です。

 「放射線管理」とは一般的には、作業員や周辺住民を放射線被ばくから防護する措置をとることであり、「放射線管理がされる装置や部品」は放射能を帯びたものです。同文書は、CIFを「放射線作業施設」とも呼んでいます。

 一月から横須賀基地で始まったGWの「メンテナンス」作業では、12号バース(岸壁)に停泊する同空母の艦尾側にバージ(はしけ)を設置。この上に建設された施設がCIFだとみられます。

 CIFの用途や具体的な場所に関する本紙の質問に対し、在日米海軍司令部は十三日現在、回答していません。


解説

米空母GW 原子炉修理か

これが疑惑の施設

横須賀基地 国民に全容明かせ

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(写真)バージの上に造られたCIFとみられる施設(神奈川県平和委員会提供)

 一面所報のように、米太平洋軍のキーティング司令官が米議会証言で日本に存在することを認めた「管理産業施設」(CIF)は、以前から、横須賀基地を原子力空母の母港にするには不可欠な施設だとされてきました。

 一九九八年八月に米会計検査院(GAO=当時)が公表した報告書「通常型空母と原子力空母の費用対効果」は、横須賀基地への原子力空母配備の実現可能性を検討。原子力空母の母港化には、港の浚渫(しゅんせつ)、岸壁の延長・拡幅、新たな電力供給施設に加え、「原子力推進プラントのシステムや部品を修理・メンテナンスするための管理産業施設(CIF)」が必要だと明記していました。

 しかし、同報告書は、米軍当局者の話として、横須賀基地には原子力空母の配備に必要な追加のメンテナンス施設を造るスペースはほとんどないとし、母港化は困難だとしていました。

 それにもかかわらず、横須賀基地では、岸壁の延長・拡幅、港の浚渫、新たな電力供給施設の建設などが進行。昨年九月には、原子力空母ジョージ・ワシントン(GW)の配備が強行されました。

 それでは、原子力空母の母港化に必要なCIFはどこに造られたのか―。同基地の12号バースにつながれたGWの艦尾側に浮かぶ複数のバージ(はしけ)だとみられています。

 今年四月には、一月から始まったGWのメンテナンス作業中に一トンもの放射性廃棄物が生じ、三月下旬に米国に向けて搬出されたことも判明。在日米海軍司令部は本紙の問い合わせに対し、このメンテナンス作業の対象には、原子炉の炉心・燃料に直接つながる一次冷却系設備も含まれていると認めました。

 米軍の説明によると、この一次冷却系設備は、原子炉とともに、「原子炉格納容器」の中に設置されています。(二〇〇六年四月発表の「ファクト・シート」)

 日本政府は「米原子力艦は日本では原子炉の修理はしない」「放射能管理を必要とする作業はしない」と米側から説明を受けていると繰り返してきました。さらに「そもそも、放射性物質を扱うような作業ができる施設が日本の米軍施設・区域内に作られることもありません」(外務省パンフレット)と断言してきました。

 しかし、この説明は、放射性廃棄物の搬出という事実一つとっても疑わしいものとなっていました。その上、今回、「原子力推進機関に関連し、放射線管理がされる装置や部品」の「修理」を行うCIFという施設の存在が明らかになったのです。

 CIFが具体的にはどこに造られ、その中で実際には何が行われているのかなど、日本政府は米側に全容の説明を求め、国民に明らかにすべきです。(榎本好孝)



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