2009年4月12日(日)「しんぶん赤旗」

北朝鮮 ロケット発射問題

共産党はこう考えます


 北朝鮮のロケット発射問題で、いま一番大事なことはなにか。日本共産党はこう考えます。


Q いま一番大事なことは?

核開発やめさせる外交努力です

 北朝鮮が五日にロケットを発射したことは、北東アジアの平和と安定に緊張をもたらす恐れのあるものであり、日本共産党は強く自制を求めてきた立場から「極めて遺憾だ」と表明しました。

 同時に、国際社会にとって、いま何より重要なことは、北朝鮮の核兵器開発を終わらせ、朝鮮半島の非核化を図るという中心課題に、外交努力を集中することです。

 今回のロケット発射に関してメディアでも、「結局は外交なのである。…MD(ミサイル防衛)があれば日本は安全だという誤った思い込みのもとで外交が思考停止になっては困る。そして、私たちが向き合うべきなのは、いかにして北朝鮮の核武装を防ぐかという問題だ」という指摘が出ています(「毎日」十日付「記者の目」、布施広氏)。

 米紙ニューヨーク・タイムズも社説(一日付)で、「米国と、そのパートナーは、最も重要なことに焦点を定め続けなければならない。すなわち、北朝鮮の核兵器開発を終わらせるということに、だ」と、冷静な対応を求めていました。

 外交的解決の場として最良の場は、北朝鮮の核問題についての六カ国協議です(北朝鮮、日本、韓国、中国、米国、ロシアが参加)。現在中断されているこの協議を再開させるために努力を続けることが重要です。

 北朝鮮を含む初の多国間協議である六カ国協議は二〇〇三年に開始。〇五年の第四回会合で採択された共同声明では、北朝鮮が「すべての核兵器および既存の核計画を放棄する」と「約束」しました。いま、六カ国協議での対話を再開させ、このような到達点にたって協議を進展させていくことが必要です。

Q なぜ国会決議に反対したの?

やみくもな制裁論こそ外交解決の障害になる

 北朝鮮に核兵器開発を放棄させるための外交努力を尽くさないまま、やみくもな制裁論や軍事対応論をふりまわすことは、外交的解決を図る上での障害以外のなにものでもありません。

 衆参両院で自民・公明、民主などの賛成で採決された北朝鮮への「抗議決議」は、この点で大きな問題点がありました。

 政府自身が「弾道ミサイルの発射か人工衛星の打ち上げか、確たることを申し上げることは困難」(増田好平防衛次官)としていた段階で、なんの根拠もなく「ミサイル」と断定したこと。にもかかわらず、弾道ミサイル発射や核実験で北朝鮮に制裁を課した国連安保理決議一六九五や一七一八違反だと決め付けたこと。さらに、それをもとに「独自の制裁を強める」と求めたことなどです。

 むやみに制裁を強化すればいいという議論は、一見「勇ましい」ようにみえても問題解決には役立ちません。それどころか、日本の側から情勢の悪化をつくりだすことになります。

 ドイツの南ドイツ新聞(六日付)は、「東京から聞こえるいくさの雄たけびや、制裁強化、それどころか新たな制裁を求める声は、問題を解決しはしない」と指摘しています。このように、やみくもな制裁を懸念する声は、国際問題の専門家に広がっています。いずれも制裁論や軍事的対応だけでは日本が国際社会で孤立する危険さえあると指摘し、六カ国協議の進展こそ問題解決に有効だと述べています。

 日本共産党は、国会決議のこのような問題点の是正を求めましたが、自公民は聞く耳もたぬの態度でした。このため、「今回の決議は、外交的な交渉で北朝鮮に核兵器開発を放棄させていく上で、障害を持ち込むことになる」(こくた恵二国対委員長)と反対したのです。

Q 国民の安全をどう考える?

核なくすことこそ一番大事、軍事対応は戦争への道

 日本共産党は国民の安全を第一に考えているからこそ、問題の外交的解決を図ることを主張しているのです。国民の安全を考えるうえでの一番の基本は、絶対に北東アジアで戦火を起こしてはならないということです。そのためにいま最も重要なのは、北朝鮮の核兵器開発を平和的な交渉でやめさせ、朝鮮半島の非核化を図ることです。

 逆に自民党などでは、「日本も核を持つという脅しくらいかけないといけない」(坂本剛二組織本部長)「日本独自で北朝鮮の基地を攻撃できる能力を」(山本一太参院議員)などといった軍事対応論が続出し、「危うい強硬論」(「朝日」十日付)などと報じられています。「ミサイル防衛」を強化せよとの意見も起こり、米国や韓国では北東アジアで軍拡競争を招くのではないかとの懸念も出ています。

 ロケット発射に「核武装」や「敵基地攻撃」で対抗したらどうなるかは火を見るより明らかです。自民党のなかからも、「逆に北朝鮮の核武装を是認することになり、人類を破滅に導く議論だ」(七日、山崎拓元副総裁)との声が出ているほどです。

 外交的努力を放棄し、軍事的対応に陥ってしまうことこそ、国民の安全を一番損なう戦争への道なのです。

Q 北朝鮮に甘すぎる?

核放棄迫るのが一番厳しい対応、無法には道理ある立場が必要

 制裁強化や軍事対応など一見“勇ましい”ことをいうのが北朝鮮に厳しく、外交解決を主張するのが“甘い”というのは、まったく逆さまです。

 北朝鮮はこれまでも、ビルマの首都ラングーン(現ミャンマー・ヤンゴン)での韓国大統領一行に対する爆弾テロ(一九八三年)、日本のイカ釣り漁船への銃撃(八四年)、大韓航空機爆破(八八年)、日本人拉致問題など、さまざまな無法行為をし、それらをきちんと清算していません。

 日本共産党は、こうした北朝鮮の無法行為をもっとも厳しく批判してきました。自民党や公明党、旧社会党がそうした北朝鮮に迎合的な姿勢をとったのと対照的です。

 同時に、このような国に対処する場合、こちらの側が道理と根拠のある立場をとらなければ、外交的解決を図る上で日本がよって立つ足場をなくすことになります。

 今回のような日本の軍事対応はなんの解決にもなりません。米CNNテレビの元アジア上級特派員のマイク・チノイ氏は「北朝鮮を懲らしめ、その行動を変えようと圧力や脅しを加えても、逆の効果をもたらすことは歴史が示している」と指摘しています。

 日本共産党は今回のロケット発射問題に対しても、何が問題の核心であるかを踏まえ、北朝鮮の核開発を終わらせるために努力を集中する外交の前進を提起しています。

 核・ミサイル開発推進による「瀬戸際外交」を繰り広げる北朝鮮には、国際社会が一致して核兵器開発の放棄を迫ることこそが一番厳しい対応なのです。

Q 世界の対応は?

6カ国協議再開に努力、日本だけが軍事対応で突出

 六カ国協議に参加する諸国で、ロケット発射に向けて国内での軍事対応が突出したのは、日本だけです。

 米国、中国、韓国、ロシアは、いずれも北朝鮮のロケット発射に対して批判や懸念を表明しましたが、今後の方策としては六カ国協議を通じた外交解決の道をとることで共通しています。経済制裁の強化を決めたのは日本だけです。

 一月に発足した米国のオバマ政権は、軍事対応論を退け、六カ国協議再開による外交的解決を最優先させています。

 日本は、国連安保理で対北朝鮮制裁強化決議の採択をめざしました。しかし、拒否権をもつ中ロ両国が北朝鮮を刺激する措置に慎重なことに加え、安保理で日本の後ろ盾となることの多かった米国も冷静な姿勢をとっており、制裁決議ではなく議長声明で落ち着く見通しです。

 むしろ世界では、日本が過剰な対応をすることを警戒する声が出ています。スタンフォード日本センター所長のアンドリュー・ホルバート氏は、「感情的に『迎撃、迎撃』とこぶしを振り上げ…北朝鮮に圧力をかけているつもりだったのでしょうが、逆に国際社会で四面楚歌(そか)になる可能性さえあるのです」「敵視するだけの外交で、日本に成果はあったでしょうか」と述べています(「毎日」十日付夕刊)。

 香港の週刊誌『ファー・イースタン・エコノミック・レビュー』電子版は、「日本は最低限、六カ国協議から離脱する口実を北朝鮮に与えてはならない」と警告。「日本が認識すべきなのは、国際社会の最終目的は朝鮮半島の非核化だということであり、それが日本の国益にもかなう」と述べています。



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