2009年4月9日(木)「しんぶん赤旗」

主張

新基地アセス

強行のための調査でしかない


 防衛省が作成した沖縄での米軍新基地建設に伴う環境アセスの準備書が公告縦覧されています。

 ジュゴンや海藻・草類などの環境調査は少なくとも三年は必要といわれます。にもかかわらず防衛省がわずか一年の調査をもとに準備書を作ったのは、二〇一四年までに新基地建設を強行するためです。沖縄県民の疑問に木で鼻をくくったような説明しかせず、五千四百ページというぼう大な文書を一カ月で閲覧させる強引なやり方は、県民の「理解を得る」という政府見解からみても許されません。

県民の疑問にこたえず

 日米両政府が合意したキャンプ・シュワブ(沖縄県名護市)への新基地建設計画は、普天間基地(宜野湾市)の基地機能をさらに強める、恒久的な最新鋭の基地をつくるものです。基地の痛みのたらい回しにすぎず、疑問と不安が広がっているのは当然です。しかし準備書は、この県民の声にまったくこたえていません。

 新基地を使用する航空機の種類と飛行経路は、爆音被害や墜落の危険を押し付けるというのに、準備書は危険を覆い隠す役割を果たしています。

 機種については普天間基地に配備されている攻撃型ヘリ、輸送ヘリ、C130輸送機などを列挙するだけです。米海兵隊が一二年秋から沖縄に配備する最新鋭機オスプレイについてはいっさい説明を避けています。ヘリと固定翼機の機能を併せ持った同機は墜落事故を多発していることでも知られています。騒音の新たな元凶になるとともに、墜落の恐怖をまきちらすことになるのは間違いありません。こうした事実を隠したままの準備書は、環境影響評価法が定める環境アセスの趣旨をゆがめるものです。

 飛行経路についての説明もいいかげんです。準備書は、「緊急事態」以外にも「訓練の形態等によって集落上空を飛行することもあり得る」といいながら、飛行経路を「特定することは困難」だといって具体的説明を避けています。政府が「得心しない限り」飛行させないかのようにいっているのもごまかしです。米軍の運用に「口ははさめない」といっている政府・防衛省が米軍機の飛行を制限できるわけがありません。

 天然記念物に指定されているジュゴンへの爆音の影響についても、「影響レベルを上回る」と認めながら、「飛行コース直下」にとどまるというだけです。爆音の影響を小さくみせるためです。ヘリが広い範囲に爆音をばらまくのはよく知られた事実です。準備書の言い分は疑問です。

 海藻・草類の生育状況の把握のため沖縄県知事意見が求めた複数年調査さえ、「今回は四季」やったといって頭から拒否しています。これでは、沖縄県が厳正に保護するとした新基地予定水域の環境が守れるはずがありません。

強行姿勢をあらためよ

 新基地建設計画は政府の思い通りに進んでいません。「基地のない、平和な島づくり」をめざす県民のたたかいが阻止しているのです。アメリカの軍事覇権主義がイラク戦争の失敗で破たんした以上、ブッシュ前政権が日本に押し付けた新基地計画はやめるべきです。

 普天間基地の即時閉鎖・早期返還をはじめ、沖縄の米軍基地撤去の運動を広げることが重要です。



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