2009年3月23日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

小さな支援が社会を変える


 大企業の「雇い止め」「非正規切り」で多くの人が職を失うなかで、行き場を失った人を援助し、「社会的連帯で、雇用・暮らしを守ろう」という運動が広がっています。宮城県と岡山県倉敷市水島のとりくみを紹介します。


宮城県各地

労組、寺などが協力

 宮城県では、昨年11月5日の「反貧困みやぎネットワーク」の結成を皮切りに、「みやぎ“派遣切り”相談・支援センター」(2月13日)、「みやぎ青年ユニオン」(同15日)が発足しました。失業者や生活困窮者を支援する輪ができています。

 三月十五日には仙台市役所前広場で、「派遣村」の宮城版ともいえる「反貧困みやぎネットワーク 市民フェスタ2009」を開き、広く市民に訴えました。

団交できるとは

 会場の一角に集まっていたみやぎ青年ユニオンの仲間たち。三十九歳の男性を六年以上「派遣」で働かせたあげくに不当解雇した会社と四日に初めて団交(団体交渉)しました。吉田若葉さん(29)は「まさか自分たちの手で団交できるなんて思いもよりませんでした」と驚きを隠しきれません。

 交渉相手の派遣会社は、偽装請負の疑いがあるにもかかわらず、誠意ある対応を示さず、交渉は続いています。

 青年ユニオンの橋本秀人委員長は「私たちが子どものとき、労働組合といえば、賃上げ闘争でした。ところがいま労働者は、すぐに住む場所も食べものもなくなるんです。昔よりひどくなっているんです」と憤ります。「でも、あきらめないことが大事です。私たちがやっていることは小さいことかもしれませんが、社会を着実に変えていっています」

みんな同じ思い

 住む場所も行き場所もない人を受け入れる「駆け込み寺」が仙台市の南、亘理(わたり)町にある不毛山行持院(ふもうさんぎょうじいん)です。

 弁護士や支援者から紹介され、慣れない環境で再起をかける人たち。手元に数百円しかなかった人もいたといいます。現在、女性も含め六十八歳から二十二歳までの二十二人が共同生活しています。五十人くらい収容できるといいます。

 新聞記事をたよりに兵庫県姫路から来た三十八歳の男性は「一回仕事をやめると、再就職先がなく、とうとう家賃が払えなくなりました。困っていた時に、もうこれしかない」とわらにもすがる思いで電車に飛び乗ったと明かします。「あのときは、今日どうしようとそれだけだったのですが、ここへ来てからは、これから先のことをどうしようかと前向きに考えるようになりました」と心境を語ります。

 真壁太隆住職(59)は「ここは、あせらずに、次にどうしたらいいか自分で答えを見つける場」といいます。「私はそのためのお手伝いをしているにすぎません。生活保護や住居の手続きなど、ここから先は弁護士さんが面倒をみてくれます」と話し、自立生活へ進むためにも、弁護士や支援者との連携が大事と説きます。

 住職の携帯には「卵があるよ」「余った食材を取りに来て」とひっきりなしに電話がかかります。「毎日の食材確保で忙しいですよ。でも、実情を訴えれば、みんな何とか手助けしたいという思いでいっぱいなんです。喜んで協力してくれますよ」(宮下進)

 真壁太隆住職の連絡先=宮城県亘理郡亘理町逢隈小山字与平谷地六一。電話090(2796)9440


岡山県倉敷市

再起期す場を提供

 岡山県の倉敷市水島の「ほっとスペース25」(水島労働・生活相談センター)が2月10日に開設されて1カ月余、「ほっとスペース」への相談は27件、30人をこえました。解雇や「派遣切り」にあった人々を温かくむかえ、希望の灯をともしています。

地図

 「相談に訪れた人々がほっとできる空間を。憲法二五条の生存権を守る運動に」と名付けられた「ほっとスペース25」。三菱自動車水島製作所の千人をこえる派遣・期間社員の雇い止めなどで、人々の命や暮らしが脅かされるなか、労働、生活、医療などの相談の場をつくろうと、倉敷医療生活協同組合と同医療生協労働組合が急きょ立ち上げました。

道開ける援助を

 一階は相談センターと炊事場、二階の和室が一時避難所です。医療生協職員OBのボランティアが交代で常駐し、労組役員やケースワーカーなどと協力して相談にのります。当面の生活だけでなく、たたかうことで道を切り開くよう援助し、県労働組合会議や日本共産党市議団と連携して解決にあたっています。

 「ほっとスペース」を訪ねると、「派遣切り」などで、職や住まいを無くした人たち五人が食事をともにし、語りあっていました。

 十二月に雇い止めにあい、ネットカフェや公園などで寝泊まりしていた人、車上生活をしていた人もいます。「きょうどこで寝ようか。どうやって食べるか…。ほかのことは考えられなかった。ここにきて、やっと仕事を探そうという気持ちになれた」

 その一人、緒方浩一さん(48)は、神戸市の大企業で昨年十一月に雇い止めされました。出身の博多に帰るため、日雇いの仕事をしながら姫路市、倉敷市と足をのばしてきましたが所持金が底をつき、駅の地下道で路上生活をしていました。

やさしさにふれ

 医療生協労組などのホームレス実態調査に出合い、「ほっとスペース」に。「駅前で共産党の人が、『困ったらいつでも相談に』と演説をしていて、頼みにいこうかと思っていた矢先のこと」といいます。人々のやさしさにふれ、「この人たちは裏切れない」と博多に帰って仕事を探し、やり直そうと思っています。

 「ほっとスペース」には「三月末で雇い止めになる」「電話も止められ、一週間食事をしていない」と、一日で六件の相談があった日もあります。市の福祉事務所で「ほっとスペース」を紹介された人も二人いました。

 解雇撤回に立ち上がった三人の労働者もいます。三菱自動車の下請け会社で働いていて、突然に解雇を通告されました。日本共産党が三菱門前で配布したビラの、労働相談の案内を見て「ほっとスペース」を訪れたのがきっかけです。労働組合に加入し、会社と団体交渉をしています。(岡山県・宮木義治)


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