2009年3月23日(月)「しんぶん赤旗」

主張

要介護認定

後退招く変更は中止しかない


 厚生労働省が四月から、介護保険制度の要介護認定方式の変更を強行しようとしています。

 お年寄りが病気などで介護が必要になり介護保険でサービスを受けるためには、「要支援」(1、2)「要介護」(1から5)のどの段階に当てはまるかの、認定を受けなければなりません。ところが新しい認定方式で、これまでより要介護度が下がる人も出るというのです。要介護度が下がれば、介護保険で受けることができるサービスの内容も減らされます。

見切り発車は無責任

 介護保険利用者や関係者からの不安と批判の広がりを受けて、厚生労働省も一部の変更を見直しし、舛添要一厚生労働相は日本共産党の小池晃議員の参院予算委での追及(十八日)に、「実施後に検証し、二、三カ月後に必要なら改定する」と答弁しました。

 しかし認定方式の変更を突然発表し、批判が広がると直前になって一部だけ手直ししながら、後はともかくやってみてからというのはあまりに無責任です。認定方式の変更は介護を必要とする多くのお年寄りの、毎日の生活に甚大な影響を与えます。まずやってみてからと見切り発車するのではなく、介護度を引き下げる変更は今すぐ中止すべきです。

 厚生労働省が四月から見切り発車で実施しようとしている認定方式の変更は、「地域によるばらつきを抑える」「事務負担を軽減する」などが理由です。介護サービスが申請されたさいの調査項目を減らし、調査員のテキストを改定するとともに、たとえば「要介護1」と「要支援2」を振り分ける判定をコンピューターに任せます。

 調査項目からは「火の不始末」や「暴言・暴行」などが削られます。これではこれらの症状が見られる認知症が正しく判定されない恐れがあります。

 これまではいすやベッドに足を下げて「十分程度」座れることが目安だった座位の保持も、どんな姿勢でも「一分程度」座れれば「できる」に分類されてしまいます。頭髪がない場合の整髪についてもコンピューターには「介助なし(自立)」と打ち込まれます。

 極端なのはベッドからの移乗や移動で、これまでは「自分でまったくできない」人は「全介助」だったのに、今後は重度の寝たきりの人は機会がないからと、介助のない「自立」に分類されます。さすがにこれについては、床ずれなどのため介護を受けている人の「移乗」は「全介助」になどと手直しされるようですが、介助の必要性を狭く判断する姿勢が根本的に変わったわけではありません。

介護保険の抜本改善を

 こうした要介護認定方式の変更で、厚生労働省の不十分なモデル調査でも、これまでと介助の必要性は同じでも介護度が軽く判定される人が、約二割も出ると見込まれるのは重大です。認定方法の変更だけで、これまで受けることができたサービスが受けられない人が続出します。

 認定方式の変更を直ちに中止するのは当然です。同時に背景にある社会保障予算の削減路線を根本から改め、現在でも「保険あって介護なし」といわれる介護保険制度の抜本的な見直しが急務です。要介護認定制度は廃止し、現場の専門家の判断で適正な介護を提供できるようにすべきです。



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