2009年3月22日(日)「しんぶん赤旗」

「政治改革」の経過が物語るもの

企業・団体献金禁止 まったなし


 自民、民主両党の多数の政治家に流れた西松建設の違法献金は、金権腐敗政治の温床となっている企業・団体献金の害悪を改めて浮き彫りにしました。その背景には、日本共産党以外の諸党が、金権腐敗根絶という国民の願いを選挙制度改変にすりかえ、企業・団体献金を温存してきたという問題があります。その経過は―。


発端は… 88年のリクルート事件

 一九八〇年代末から九〇年代にわたる「政治改革」論議の発端はリクルート事件(八八年)でした。値上がり確実な同社の子会社の未公開株が、当時の竹下登首相はじめ、日本共産党以外の与野党国会議員に譲渡され、それらの政治家が“ぬれ手にアワ”で巨利を得ました。政官財ぐるみの一大疑獄事件に発展し、国民の怒りは沸騰しました。

 支持率一ケタ台に落ち込んだ竹下内閣・自民党は、腐敗の根源である企業献金を禁止するどころか、「諸問題の多くが現行中選挙区制の弊害に起因している」(八九年の自民党「政治改革大綱」)と小選挙区制度導入の議論にすりかえ、「法人などの寄付を禁止する理由はない」(同)と企業献金を温存したのです。

 九一年には海部内閣が、小選挙区制導入と政党助成金制度創設などを柱にした「政治改革関連法案」を国会に提出。問題のすりかえは明らかで、野党と世論の批判を前に、与党議員も「過半数が内閣提出の法律案に反対又は疑問があるという立場に立って質疑」(『政治改革六年の道程』)せざるを得ない事態となり、関連法案は審議未了・廃案となりました。

「協議会」 問題棚上げの「合意」

 関連法案の廃案を受けて設置されたのが、与野党の書記局長・書記長・幹事長らを構成メンバーとする「政治改革協議会」でした。

 日本共産党からは志位和夫書記局長(当時)が参加し、企業・団体献金の全面禁止、定数不均衡の抜本是正にただちにとりくむべきだと提起。“企業は「社会的存在」というが、企業が政治にカネを出せば、主権者である国民の意見は押しのけられる”“企業・団体献金の実体は「ワイロ」以外の何ものでもなく、これを野放しにして「政治浄化」は期待できない”などと主張し、自民党の企業・団体献金容認論をことごとく粉砕しました。

 それでも、自民党は「(企業・団体献金存続という)従来からの考え方やスタンスを変えるつもりはない」(梶山静六国対委員長=当時)と棚上げし続け、他の野党も同調。結局、日本共産党以外の与野党が協議会で合意したのは、企業・団体献金を容認すること、定数是正については二段階でやるとし、「抜本是正」は「選挙制度の抜本改革」とからめてやるという方向でした。

ゼネコン疑惑 中心人物が「改革」唱え

 百人以上の政治家に工作資金が流れたとされる東京佐川急便事件(九二年)、公共事業発注額に応じて大手ゼネコンから自民党首脳に献金が流れていたゼネコン汚職事件(九三年)…。脱税容疑で逮捕された金丸信・自民党元副総裁の金庫からは金の延べ棒や金融債など数十億円の資産がみつかり、国民は怒り、あきれました。

 経団連が企業献金を「廃止を含めて見直す」とし、あっせん方式をとりやめたのもこのときでした。企業・団体献金禁止は待ったなしとなったのです。

 ところが、その反省もなく、自民党はまたも選挙制度に議論をすりかえ、小選挙区制導入・政党助成金制度創設を柱にした「政治改革関連法案」を国会に提出。当時野党だった社会、公明両党も法案を提出し、「中選挙区制が今の政治腐敗を招いた一つの原因」(社会党・佐藤観樹衆院議員)と競い合いました。

 九三年六月、宮沢内閣の不信任決議案が可決されると、金丸氏と一心同体で自身も疑惑を証人喚問で追及された小沢一郎元自民党幹事長らが自民党を飛び出し、「新生党」を結成。金権政治への反省もなく小選挙区制導入などの偽りの「政治改革」を唱え、焦点を選挙制度問題などへと大きくそらしていきます。

 当時、パリ編集国際英字紙インターナショナル・ヘラルド・トリビューンは、「ある党の腐敗した党員が汚職で自分の党にダメージを与えても、脱党して、その党に汚職腐敗の非難を投げつければ、自分の評判と未来を救うことができる、というのである」(九三年七月六日付)とあきれたように書きました。

 小沢氏らは、当時報道された清水建設の“ヤミ献金リスト”にも登場(「毎日」九三年三月二十六日付)。日本共産党の吉岡吉典議員(故人)が九三年十月、参院予算委員会で追及した小沢氏のゼネコン選挙の実態や癒着問題は、雑誌『アエラ』(今年三月十六日号)にも「小沢氏とゼネコンの原点」と紹介されています(九三年十、十一月に吉井英勝衆院議員も追及)。

改革法案 小選挙区制にすり替え

 「『非自民』にあらずば人にあらず」といったマスメディアあげてのキャンペーンで、九三年総選挙で過半数を占めた八党・会派の「非自民」連立政権は、自民党政治の「継承」を宣言。細川護煕首相は、所信表明で小選挙区比例代表並立制導入を「最優先の課題」と位置付けました。

 一方で、「続発する政治腐敗事件の多くが政治家をめぐる企業・団体献金に起因することにかんがみ、公費助成の導入などの措置によって廃止の方向に踏み出す」と述べ、企業・団体献金禁止を口実に政党助成金制度の導入をすすめました。

 九四年一月、連立与党の「政治改革関連法案」は参議院で一度は否決されましたが、最終段階で、細川首相と河野洋平自民党総裁との合意で成立。自民党の要望を受け入れ、政党と政治資金団体への企業献金容認に加え、政治家個人の資金管理団体にも企業献金を「五年に限り、年間五十万円を限度に認め」ました。結局、金権腐敗政治根絶の課題を選挙制度改悪と政党助成金の導入にすりかえただけだったのです。

 後に、「民間政治臨調」でこれを推進した当事者も「政治改革の目標を文字通り『カネのかからない政治』に置いていたわけではなかった」(佐々木毅『政治改革1800日の真実』)と告白しています。

その後… 抜け道づくりを画策

 「政治改革関連法」の一つとして九五年一月に施行された政治資金規正法には、政治家個人への企業・団体献金を五年後(二〇〇〇年)に「禁止する措置を講ずる」(付則九条)と定め、政党への企業・団体献金も「見直しを行うものとする」(同一〇条)と定めていました。

 ところが、九九年十月に連立を組んだ自民、自由、公明三党は、企業・団体献金の永続化をはかろうと両付則の削除を画策。政治家個人の資金管理団体への企業・団体献金の禁止は二〇〇〇年から施行されることになりましたが、政党本部や政治家が代表を務める政党支部は企業・団体献金を受け取れるよう抜け道をつくりました。

 このとき、自由党党首として抜け道づくりを主導したのが小沢一郎氏でした。その結果、二〇〇〇年には新たに千三百八十五もの政党支部がつくられ、史上最多の八千四百九十二になりました。

 その後も、口利き疑惑や日本歯科医師連盟からの迂回(うかい)献金疑惑など、抜け道を利用した金権腐敗事件が後を絶ちません。

ニセ「改革」が生んだ西松マネー疑惑

 今回の西松建設による違法献金事件は、企業・団体献金禁止を選挙制度改悪にすりかえてきたニセ「政治改革」が生んだ疑惑です。

際立つワイロ性

 企業名を隠すため、ダミー(隠れみの)の政治団体を通じて多額の献金を受け取っていたこと自体、その「わいろ性」を際立たせています。政党や政党支部への企業・団体献金を“合法”化しながら、なお隠すべき献金があったのです。

 金権腐敗事件が起こるたびに、「政治改革」と称して政治資金規正法は「改正」されてきました。一九四八年の施行以来、政規法の「改正」は、主なものだけで十三回、細かなものまで含めれば三十回に及びます。

 しかし、いずれの「改正」も、中身は献金額や献金の受取先を制限するだけ。企業・団体献金の全面禁止には踏み切らず、“抜け道”を残してきました。ここに疑惑の根源があります。

 政治献金は「選挙における投票の自由と表裏を成す」(九六年の最高裁判決)ものです。本来、国民だけに認められた権利であり、政党に対する最大の支持表明でもあります。国民から献金を受けようと思えば、国民の利益に反する政治はできず、政党を縛る役割も果たします。

 企業が政党に献金する「影響力」は、個々の国民による政治献金と比べ「はるかに甚大」で、「政党の政策が会社あるいは産業団体からの政治資金の寄付によって左右されるとすれば…選挙制度の意義を否定し、その根幹をも揺るがすことになりかね(ない)」(熊谷組の献金事件での福井地裁判決、二〇〇三年二月)のです。

 実際、政党が企業・団体献金と政党助成金に依存するようになった結果が、金権腐敗と国民無視の政治の横行です。西松建設の違法献金が自民、民主両党に流れていたこと、両党が、法人税減税などで大企業を優遇する立場をとる一方、国民にはさらなる消費税増税を狙っていることは、ほんの一例です。

 西松建設の違法献金事件を受け、政府・与党、民主党からも企業・団体献金見直しの声が出ています。疑惑の渦中にいる民主党の小沢一郎代表は、「企業・団体献金の全面禁止以外、実効が上がらない」と全面禁止を口にしました。河村建夫官房長官も「企業献金は極めて限定的に絞ることを模索すべきだ」と述べました。

実行すべき三点

 かつて「企業献金が悪で個人献金が善というのは根本的に間違い。個人献金の方が癒着がひどいに決まっている」と言ってのけた小沢氏さえ、全面禁止を口にせざるを得なくなったことは大きな変化です。

 しかし、小沢氏はそれをいう前に、日本共産党の志位和夫委員長が指摘したように、自らの企業献金についての総括、疑惑についての国民への説明、自ら受け取らない意思の表明の三つをなすべきです。自民党も同様です。

 疑惑の全容解明と、企業・団体献金、政党助成金からの決別ができない政党に、「政治とカネ」を語る資格はありません。各党の姿勢が鋭く問われています。

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